はじめに
1.
本機はプロフェッショナルの制作現場での使用を想定して、機能及び性能を追及したヘッドホ
ンです。この用途で特に重要な原音に忠実なサウンドならびに遮音性を徹底的に追及し、それ
らを高度なバランスで実現するために、これまでソニーが培ってきた技術、そして新たに開発
した技術を余すことなくつぎ込んでいます。この冊子ではそれらの技術について解説します。
原音に忠実なサウンドのために
2.
液晶ポリマーフィルム振動板
2-1
ドライバーユニットの振動板材料には、軽量かつ高剛性で高
内部損失という、一見相反する特性が求められます。広い帯
域にわたって入力信号を忠実に音に変換するためには、振動
板の剛性の高さが必要とされる一方、振動板自体の不要な共
振を抑えるための内部損失の高さが求められます。
液晶ポリマーは、このふたつを高度なバランスで兼ね備える
材料として従来から知られていました。しかしこれまでの組
成、製法では、十分な耐熱性が得られず、またフィルム伸度
液晶ポリマーフィルム液晶ポリマーフィルム
今回、伸度の高い液晶ポリマーワニスを用いたキャスティングフィルムを開発することで、高
剛性と広帯域にわたる高い内部損失を両立しながらも必要な薄さと成形に耐えうる強度を得る
ことに成功し、原音に忠実なサウンドを実現する理想的な振動板材料として採用することがで
きました。
が小さいことから、成形の自由度が狭く、薄さが要求される
ヘッドホン用の振動板材料として使用することはできません
でした。
2
超広帯域HDドライバーユニット
2-2
本機では、1つのユニットで低音域か
ら超高音域まで再生可能な「HD(
Definition
用しました。振動板には前述の液晶ポ
リマーフィルムを採用。またその形状
については、数百種類に及ぶ形状パ
ターンのシミュレーションに加え、実
際の試聴を繰り返し行うことで導き出
し、採用しました。さらに振動板を駆
動する力の源となるマグネットには
360 kJ/m
トを採用し、これらにより
80 kHz
した。
)ドライバーユニット」を採
3
高磁力ネオジウムマグネッ
という広帯域再生を実現しま
5 Hz
High
から
ドライバーユニットの分解図
ドライバーユニットの分解図
音響レジスター
音響レジスター
端子板
端子板
音響レジスター
音響レジスター
フレーム
フレーム
マグネット
マグネット
ポールピース
ポールピース
振動板
振動板
プロテクター
プロテクター
2-3
高純度
7N-OFC
リッツ線
信号を伝送するコードには7Nグレード(
度を誇る
送時の信号ロスが最小限に抑えられることにより音の劣化を
極限まで少なくしています。
OFC(Oxygen Free Copper
99.99999 %
:無酸素銅)を採用。伝
)の高純
3