LEICA X1
As spontaneous as life itself.
ハバナのマレコン通り。港口のあたり。撮影セットはこの近くに設置された。
LEICA X1
かけがえのない瞬間を撮る理想的な旅の友
レゲトンのリズムが狭い通りに響き渡る。容赦なく照りつける太陽の下、光り輝くクラシックな車が並ぶ。それらはみな、はるか昔に生産中止に
なったものだが、愛情を込めてぴかぴかに磨き上げられている。ほとんどの建物が古く、ファサードの漆喰は剥がれている。中には、次の突風に
持ちこたえられるだろうか、と思うほど古い建物もある。また、ある地区では、お互いを支え合ってかろうじて立っているような、老朽化した植民
地時代の建物も見かける。男たちは日陰に腰掛け、ドミノをして時間をつぶす。通りの少し向こうの方では、ミュージシャンがサルサを演奏して
いる。それに合わせて踊る若いカップル。1人の男が、溢れんばかりのライムを積んだ手押し車を押して、数人の老女のそばをゆるゆると通り過
ぎる。老女たちは通りの端で語り合っている。おそらく自分たちと同じくらい年月を経た物語を。
トーマス・ステファンが、ライカX1を手に、気だるいハバナ旧市街を歩いたときの第一印象はざっとこんな感じである。トーマスはフォトグラ
ファーのアシスタント。ファッション撮影のため、40名のクルーの一員として、キューバの首都ハバナへやってきた。滞在しているホテルから、撮
影セットが設営されたマレコン通り(ハバナの有名な海岸通り)へ行くには、セントロ・ハバナという下町を通り抜ける必要がある。ここは、荒廃
がもたらす美に満ちた地区だ。ハバナがこれほど魅力的なのは、この地区のおかげもあるだろう。バロック様式やネオクラシック様式の荒れ果
てた建造物。その壮麗さ……。トーマスは、この町の過去の繁栄について束の間思いをめぐらせた。しかし現在も、ハバナは素晴らしく豊かな恵
みに満ちている。この街には、物語やイメージ、喜びや情熱があふれているのだ。
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ハバナ旧市街を抜けて、撮影セットの現場に向かう。その道すがら、無数の魅力的な情景が目に飛び込んでくる。
マレコン通りの撮影セット。ボクシングリングの設営、ライトの調整、バイザーの点検など、準備は着々と整いつつある。
トーマスはまさしく最初の瞬間から、生き生きとしたハバナのリズムに強く引き付けられた。事実、単なる傍観者ではなく、この街にすっかり同
化してしまった。ハバナという街は、率直で、偽りがなく、開放的だ。カリブ海上諸国の中で4番目の大都市だというのに、まるで色彩豊かな野外
ミュージアムのような雰囲気を持っている。トーマスはマレコン通りに行くまでの道すがら、さっと通り過ぎる無数のイメージを気軽にカメラに
収めることができた。コンパクトで使いやすいライカX1だから可能なこと。躍動的なこの街と同じように、あるがままに魅力を発揮するライカ
X1。いつのまにかその場の息吹をとらえてしまう。
クルーの一行は、すでにマレコン通りに到着していた。若者や漁師や泳ぎを楽しむ人たちが、集まっている。その中央に撮影セットは造られて
いた。まさに堤防の上だ。ボクシングのリングというこのセットは、きわめてエモーショナルな今回のファッション撮影には、完ぺきな背景だと言
えるだろう(キューバは、数多くのボクシングチャンピオンを輩出している国として、また、ボクシングに熱狂的な国として有名である)。しかし、こ
の素晴らしいセットを背景に写真撮影を始めるには、照明装置の組み立て、露出のチェックなどその前にするべきことがまだたくさんある。モ
デルは、フォトグラファーとキューバ人のボクシングコーチの指示に合わせてポーズをとる。トーマスは合間を見つけては、ライカX1を使って、
まったく異なる視点からこの撮影のエッセンスを記録していく。撮影の舞台裏で進行するさまざまな人生「無意識に語られるインサイド・ストー
リー」を撮るのだ。これを容易にしてくれるのは、ライカX1。ハンディで目立たないから、被写体の注意を引いてしまうことがない。しかし、それ
が記録する画像については、まったく逆のことが言える。すなわち、それぞれの被写体は、ライカX1の卓越したクオリティによって、光り輝く存在
となるのである。
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