TB6569FG 使用上の注意点
TB6569FG 使用上の注意点
TB6569FG は、出力トランジスタに MOS 構造を採用した DC モータ駆動用フルブリッジドライバICになります。
低 ON 抵抗の MOSプロセス、およびPWM駆動方式の採用により高熱効率駆動が可能になります。
また、IN1, IN2 の 2 つの入力信号により、正転/逆転/ショートブレーキ/ストップの 4モードを選択できます。
1. 電源電圧
(1) 電源電圧の動作範囲
絶対最大定格は 50 V ですが、動作電源電圧は 10 V~45 V の範囲内にてご使用ください。
(2) 電源投入/遮断方法
単一電源 VM であり、低下電圧検出回路が内蔵されているため、特に電源投入や遮断のための手順はありま
せんが、電源が不安定な状態でモータを動作させると異常な動作の原因になりますので、入力 IN1 = Low, IN2 =
Low の状態で電源 VM が安定な状態に立ち上がってから入力を切り替えてモータを動作することを推奨いたし
ます。
また、同様にモータが停止してから、電源を遮断することを推奨いたします。
2. 出力電流
VM = 36 V 以下では、OUT1, OUT2 の絶対最大定格出力電流は 4.5 A 以内で使用し、VM = 36 V 超では OUT1,
OUT2 の対最大定格出力電流は 4.0 A 以内でご使用ください
また、使用条件 (周囲温度や放熱板の有無や実装基盤方法等) によって、使用可能な平均出力電流は増減します。
T
= 150°C を超えない範囲内で絶対最大定格出力電流 4.0 A、または 4.5 A以下の平均出力電流をご使用ください。
j
3. 制御入力
電源 VM が OFFの状態でIN1, IN2, PWM, VREFに入力されても、電源 VM に回り込むことはないので、IC が
動作するようなご心配はありません。
TSD, ISD の解除には IN1 = Low, IN2 = Low 状態を 1 μs 以上は入力するようにしてください。
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2010-06-03
TB6569FG 使用上の注意点
4. PWM 周波数
PWM 端子に PWM 信号を入力することにより速度制御が可能になります。
(PWM 端子を使用せずに、IN1, IN2 端子に PWM 信号を入力して PWM動作することもできます。)
PWM 制御時は、通常動作とショートブレーキの繰り返しとなります。
出力回路での上下パワートランジスタの同時 ONによる貫通電流を防止するために上下のパワートランジスタの
ON ↔ OFF が切り替わるタイミングにおいてデットタイムを IC 内部にて生成しています。
このため、外部入力によりOFF タイムを挿入することなく、同期整流方式による PWM 制御が可能となります。
また、PWM周波数は 100 kHz 以下を動作範囲として記載しておりますが、動作範囲内でも実際は以下のスイッ
チング特性のように入力に対して出力は歪みます。
入力に対して出力が歪むことや DUTY がずれることを考慮して使用する分には 100 kHz 以上の周波数も対応可
能になります。
なお、以下のスイッチング特性は標準値なので、電源電圧、温度、IC のバラツキで変動しますので、十分マージ
ンを持ってご使用ください。
スイッチング特性
PWM 入力
(IN1, IN2)
t
pLH
t
pHL
出力電圧
(OUT1, OUT2)
10%
90%
50%
t
r
90%
50%
10%
t
f
VM = 24 V Ta = 25°C
項目 値 単位
t
650 (標準)
pLH
t
450 (標準)
pHL
tr 90 (標準)
tf 130 (標準)
ns
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5. 応用回路例
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R4
LERT
(6)
IN1
IN2
PWM
ヒューズ
(4)
VM
5 V regulator
UVLO
Control
VSD
TSD
Predriver
ISD detection
ISD detection
ISD
(1)
C2
ISD detection
C1
ISD detection
OUT1
R1
C3
OUT2
(2)
Motor
OSC
1/10
VREF
(8)
SGND
OSC
C4
(1) 電源端子用コンデンサ
VM と GND 間にコンデンサを、できるだけ IC の近くに接続してください。
推奨値
項目 記号 推奨値 備考
VM – GND 間
(2) 出力間コンデンサ、抵抗
モータのブラシノイズ除去する場合は接続ください。その場合、コンデンサC3 が充電されていない状態では
通電時、瞬間的に出力短絡モードとなりますので、抵抗 R1 により電流を制限してください。
(3) VM, OUT1, OUT2, RSGND 配線
モータにより大電流が流れますので、配線パターンを十分確保してください。特にRSGND, SGND は配線イ
ンピーダンスの影響を受けないようには十分大きく配線領域を確保して接続し GND と接続してください。
Level Time
VISD
R4
(7)
C1 10 μF~100 μF 電解コンデンサ
C2 0.1 μF~1 μF セラミックコンデンサ
TISD
R3
0.4 V (標準)
RSGND
R2
(8)
3
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(4) ヒューズ
過電流の発生や IC の故障の場合に大電流が流れ続けないように、適切な電源ヒューズを使用してください。
IC は絶対最大定格を超えた使い方、誤った配線、および配線や負荷から誘起される異常パルスノイズなどが
原因で破壊することがあり、この結果、IC に大電流が流れ続けることで、発煙・発火に至ることがあります。
破壊における大電流の流出入を想定し、影響を最小限にするため、ヒューズの容量や溶断時間、挿入回路位置
などの適切な設定が必要となります。
過電流検出回路 (ISD) が内蔵されていますが、どのような場合でも IC を保護するわけではありません。動
作後は、速やかに過電流状態を解除するようお願いします。絶対最大定格を超えた場合など、ご使用方法や状
況により、過電流制限回路が正常に動作しなかったり、動作する前に IC が破壊したりすることがあります。ま
た、動作後、長時間過電流が流れ続けた場合、ご使用方法や状況によっては、IC が発熱などにより破壊するこ
とがあります。
過電流状態が継続した場合に 2 次破壊が懸念されることと、過電流検出回路は不感帯をもつこと等から、出
力負荷条件により必ずしも動作をしないことも懸念されることから、万が一の事を考慮し、弊社仕様書上も注
意事項として、必ずしも動作をしない旨の記載をさせていただいております。
例えば、出力電流の絶対最大定格と ISD の検出回路の作動電圧の下限に掛からない電流が流れ続けた場合、
出力段の DMOS が劣化します。同様に、一度でも、絶対最大定格を超える電流が出力段の DMOS に流れた場
合、素子が劣化します。そのため、1 回目の ISD の検出動作では IC の破壊にいたらないものの、2 回、3 回と
ISD の検出動作が繰り返された場合、回数を重ねるごとに DMOS は劣化していき、IC が破壊する懸念があり
ます。
弊社では 2 次破壊への対応としても、電源へのヒューズの使用をお願いしております。
(5) FIN (フィン)
フィンは放熱の役割があるので、熱設計を考慮してパターン設計をしてください。
(フィンはチップ裏面と電気的に接続されているので、絶縁または GND に接続してください。)
(6) ALERT 端子
オープンドレイン出力になりますので、抵抗を外部電源にてプルアップ接続して High を出力します。
Low は 通常動作時で High (ハイインピーダンス) は異常時 (UVLO, TSD, VSD, ISD 動作時) になります。
プルアップ抵抗は 10 kΩ~100 kΩを推奨します。
(7) VISD 端子、TSID 端子の抵抗設定
4 個の各出力パワートランジスタに流れる電流に各検出機能を内蔵しております。
VISD 端子の抵抗の設定により検出電流値は設定可能であり、1 つでも検出設定時間 (マスク時間) を超える
と、すべての出力を OFF (ハイインピーダンス: Hi-Z) します。
検出設定時間 (マスク時間) は TISD 端子の外付け抵抗により設定できます。
IN1 端子: L, IN2 端子: L にすることで解除して通常動作に復帰可能となります。
下記に VISD 端子の外付け抵抗値-ISD 検出電流値、TISD 端子の外付け抵抗値-ISD マスク時間のグラフを参
考に示します。
TISD 端子のマスク時間の設定はノイズ等で誤動作しない以上、過電流検出時に IC が破壊しない以下の間に
設定してください。
VISD 端子、TISD 端子ともに 5 kΩ未満の抵抗値は設定をしないでください。しかし過電流検出機能を使用
しない設定にする場合は TISD 端子を GND に接続してください。
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TB6569FG 使用上の注意点
VISD 端子の外付け抵抗値 – ISD 検出電流値の関係
(参考値)
15.0
14.0
13.0
12.0
11.0
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
出力電流検出値(A)
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0 1020304050
VISD抵抗値(kΩ)
PchTyp
PchMin
PchMax
NchTyp
NchMin
NchMa
注: 出力はNchDMOS と Pch DMOS のコンプリメンタリ構成されており、ISD の検出電流値は多少の違いが
あります。
(8) RSGND 端子、VREF 端子の定電流 PWM 制御設定
定電流 PWM 制御の設定は VREF 端子に電圧を入力することにより、定電流動作におけるピーク電流値を決
定します。ピーク電流値は、以下式により決定されます。
TISD 端子の外付け抵抗値 – ISD マスク時間の関係
(参考値)
14
13
12
11
10
9
8
7
6
マスク時間 (us)
5
4
3
2
1
0
0 1020304050
TISD抵抗値(kΩ)
Min.
Typ.
Max.
I
= VREF/R2 × 1/10 [A] 例: R2 = 0.2 Ω, VREF = 2 V 時 IO = 1 A
O
また、定電流 PWM の周波数は OSC 端子のコンデンサで設定することが可能であり、発振周波数は以下の式
で近似されます。
fosc [Hz] (標準) = 0.42/ (Cosc [F] × 10
3
) 例: C4; Cosc = 1800 pF 時 fosc = 233 kHz
OSC 周波数は 500 kHz 以内にしてください。OSC 周波数を高く設定すると出力の PWM 時のスイッチング
ロスが増えます。OSC 周波数を低く設定すると PWM 周波数で可聴領域に入るようなことがありますので、注
意してご使用ください。
周波数は電源電圧、温度、IC のバラツキで変動しますので、十分マージンを持ってご使用ください
また、RSGND 端子は検出抵抗接続時の過電圧防止のため、0.4 V (標準) 以上の電圧で出力 OFF (ハイインピ
ーダンス: Hi-Z) し、ISD と同様の制御となります。ALERT 端子も High になり、IN1 端子: L, IN2 端子: L に
することで解除して通常動作に復帰可能となります。
RSGND 端子の検出抵抗は 0.1 Ω以上を使用することを推奨します。
また、検出抵抗に発生した電圧はSGND端子基準の電圧と比較しますので、検出抵抗はRSGND端子とSGND
端子の近くに配線インピーダンス影響を受けないように設置してください。
定電流 PWM 制御をしない場合は RSGND 端子に抵抗 R2 は接続せずに SGND とショートしてご使用くださ
い。
RSGND 端子と SGND 間に配線インピーダンスを持つと検出抵抗と同じような働きをして定電流 PWM 動作
するようなことになりますので、配線インピーダンスを持たないように配線パターンを十分確保してください。
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