
R&S®ZVH
ケーブル&アンテナ・アナライザ
オペレーティング・マニュアル

本書では、R&S®ZVH およびオプションについて説明します。
● R&S ZVH4 (1309.6800.24)
● R&S ZVH8 (1309.6800.28)
● R&S ZVH-K1 (1309.6823.02)
● R&S ZVH-K9 (1309.6852.02)
● R&S ZVH-K14 (1309.7007.02)
● R&S ZVH-K39 (1309.6830.02)
● R&S ZVH-K42 (1309.6846.02)
● R&S ZVH-K45 (1309.6998.02)
本書の記載内容は、ファームウェア・バージョン 1.30 以降に対応しています。
© 2012 Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG
Muehldorfstr. 15, 81671 Munich. Germany
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Printed in Germany – お断りなしに記載内容の一部を変更させていただくことがあります。
あらかじめご了承ください。
R&S® は、Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG. の登録商標です。
本書では、「R&S®ZVH」を「R&S ZVH」と略記します。

R&S ZVH 基本的な安全指示
基本的な安全指示
製品の操作を開始する前に、必ず、以下の安全に関する説明を読んでください。
ローデ・シュワルツでは、弊社が提供する製品が常に最新の安全基準を満足し、お客
様に対して最善の安全性が提供できるよう、あらゆる努力をしております。弊社の製
品およびそれらに必要な補助機器は、対応する安全基準に従って設計され、試験され
ています。これらの安全基準に対する適合性は、弊社の品質保証システムによって、
常に確認されています。この製品は、EC Certificate of Conformity(欧州共同体適合証
明)に従って設計・検査され、安全基準に完全に合致した状態で弊社の工場から出荷
されています。この状態を維持し、安全に動作させるためには、このマニュアルに示
されているすべての指示と注意事項を守ってください。安全指示についてご質問があ
れば、弊社の支店/営業所にお問い合わせください。
さらに、使用者は、適切な方法で製品を使用しなければなりません。この製品は、産
業環境やラボ環境、または作業現場でのみ使用するよう設計されており、どのような
場合であっても、個人の身体の安全や資産を損なう可能性があるような方法で使用す
ることはできません。指定されている目的を逸脱して製品を使用したり、製造者の指
示を守らなかったりした場合には、使用者が全責任を負うものとします。このような
状態で製品が使用された場合には、製造者は一切の責任を負わないものとします。
取扱説明書に従い、処理能力の範囲内(データ・シート、資料、以下の安全指示参
照)で製品が使用された場合には、製品は指定の目的で使用されたものとします。製
品を使用するためには、技術的な能力が必要とされ、英語が理解できなければなりま
せん。したがって、製品は、適切な技術力を備えた専門の要員、または必要な技術に
よって完璧な訓練を受けた要員によってのみ使用することが重要です。ローデ・シュ
ワルツの製品を使用するにあたり、個人の安全を確保するための器具が必要な場合に
は、製品の資料のそれぞれの箇所に説明してあります。
安全確保のために使用されているマークと表示内容
安全指示を守ることによって、危険な状態から生じる身体への傷害やあらゆる損傷を、
できるかぎり回避することができます。したがって、製品の操作を開始する前に、以
下の安全指示をよく読み、厳守してください。また、資料の他の部分に示されている、
身体の安全を確保するためのその他の安全指示にも、必ず従ってください。これらの
安全指示の中で、“製品”とは、計測器本体、システム、およびすべての付属品を含
め、ローデ・シュワルツが販売し、提供しているすべての商品を示します。
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回避しなければ、死亡または重傷を負う可能性がある危険
な状態を示しています。
回避しなければ、死亡または重傷を負う可能性もある危険
な状態を示しています。
回避しなければ、軽度または中程度の負傷を負う可能性も
ある危険な状態を示しています。
不適切な操作を行うと製品を損傷する可能性があることを
示しています。製品資料では、ATTENTION が同じ意味と
して使用されています。
R&S ZVH 基本的な安全指示
タグと表示内容
以下の警告表示は、リスクや危険を警告するために製品資料で使用されています。
これらのタグは、欧州経済領域の一般市場で使用されている標準的な定義に従って表
示されています。他の地域または軍事的に利用する場合は、標準の定義とは異なるこ
ともあります。したがって、ここで説明されているタグは、常に、対応する製品資料
および対応する製品に関連してのみ使用されていることを確認してください。対応し
ていない製品や対応していない資料に当てはめてタグを使用すると、誤って解釈し、
その結果、身体の安全を損なったり、製品に損傷を与えたりすることがあります。
操作状態と操作位置
製品は、製造者によって指定された操作条件下で、指定の位置でのみ使用することが
できます。使用中は、換気が妨げられないようにしなければなりません。製造者の仕
様を遵守しないと、感電、火災、または重傷や死亡を招く可能性があります。該当す
る地域または国内における安全指示および事故防止の規制をすべての実施作業におい
て遵守する必要があります。
1. R&S ZVH は、フィールド作業にも使用できる堅牢な構造を採用しています (IP
51)。別段の指定がないかぎり、ローデ・シュワルツの製品には、次の必要条件が
適用されます。所定の動作位置では、必ず、ケースの底が下方に向いていること、
IP 保護 2X、公害重大度 2、過電圧カテゴリ 2、密閉された場所でのみ使用するこ
と、最大動作高度は海抜 4600 m、最大運搬高度は海抜 12000 m。公称電圧に対
しては ±10 %、公称周波数に対しては ±5 % の許容範囲が適用されるものとし
ます。
2. ラジエータやファンヒータなど、熱を発生する装置の上に製品を置かないでくだ
さい。周囲温度が製品資料またはデータシートで指定されている最高温度を超え
ることはできません。製品がオーバーヒートすると、感電、火災、または重傷や
死亡を招く可能性があります。
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R&S ZVH 基本的な安全指示
電気的保安
電気保安情報の必要な範囲内すべてを遵守しないと、感電、火災、または身体への重
度の傷害や死亡を招く可能性があります。
1. 製品の電源を入れる前に、製品の公称電圧の設定と、AC 電源の公称電圧とが一致
しているか確認しなければなりません。別の電圧を設定しなければならない場合
には、それに対応して、製品の電源ヒューズを交換する必要が生じることもあり
ます。
2. 製品に、AC 電源から切断するための電源スイッチがない場合には、接続ケーブル
のプラグが切断装置とみなされます。この場合には、電源プラグが簡単に手の届
く位置にあり、いつでも操作できるようにしなければなりません。(接続ケーブ
ルの長さは約 2 m です。)AC 電源から切断する場合、機能的スイッチや電子式
スイッチは適切ではありません。電源スイッチのついていない製品をラックに取
りつけたり、システムに組み込んだりする場合には、システムレベルで切断装置
を準備しなければなりません。
3. 電源ケーブルが破損している場合には、絶対に製品を使用しないでください。正
しい操作条件下にあるかどうか電源ケーブルを定期的に点検してください。適切
な安全対策を講じ、慎重に電源ケーブルを設置することによって、ケーブルが破
損しないよう、また、ケーブルにつまずいたり、感電したりしてけがをすること
がないようにしてください。
4. 製品は、最大 16 A のヒューズが取りつけられた TN/TT 電源ネットワークからの
み、操作することができます(容量の大きいヒューズについては、使用前にロー
デ・シュワルツへお問い合わせください)。
5. プラグをほこりがついていたり、汚れたりしているソケットに差し込まないでく
ださい。プラグは、ソケットの奥までしっかりと差し込んでください。プラグが
十分に差し込まれていないと、火花が出たり、火災の原因になったり、けがをし
たりすることがあります。
6. ソケット、延長コード、またはコネクタのストリップをオーバロード状態にしな
いでください。火災や感電の原因になる可能性があります。
7. Vrms > 30 V の電圧の回路を測定する場合には、あらゆる危険を避けるために、
適切な手段(適切な計測器、ヒューズ、電流制限器、電気分離、絶縁など)を講
じる必要があります。
8. PC または他の産業用コンピュータなどの IT 機器との接続が、どの場合において
も、標準規格 IEC 60950-1/EN 60950-1 または IE C61010-1/EN 61010-1 に準拠し
ていることを確認してください。
9. 製品を操作しているときには、絶対に、カバーをはずしたり、ケースの一部をは
ずしたりしないでください。回路や構成部品が露出し、けがをしたり、火災の原
因になったり、製品が損傷したりすることがあります。
10. 固定位置に製品を設置する場合には、最初に設置場所の PE 端子と製品の PE コ
ンダクタを接続し、そのあとで他の接続を行わなければなりません。製品は、熟
練の電気技師によってのみ、設置し、接続することができます。
11. 適切な過電圧保護機能を使用し、雷雨によって生じるような過電圧が、製品に達
しないようにしてください。高圧保護機能がないと、操作要員に感電の危険が及
ぶ可能性があります。
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R&S ZVH 基本的な安全指示
12. 設計が意図していないかぎり、どのような物もであっても、ケースの開口部に差
し込まないでください。製品内部が短絡状態になり、感電したり、火災の原因に
なったり、けがをしたりすることがあります。
13. 別段の記載がないかぎり、製品は防水ではありません。(「操作状態と操作位
置」セクションの項目 1 も参照してください。したがって、機器を水滴の浸入か
ら保護する必要があります。)必要な予防策を取らないと、感電する危険が生じ
たり、製品に損傷を与えたり、その結果、身体への損傷を招く可能性があります。
14. 電源(AC 電源またはバッテリなど)と製品の接続を完全に外してから、製品を掃
除してください。柔らかく、糸くずの出ない布を使用して製品を掃除してくださ
い。アルコール、アセトン、またはセルロースラッカー用の希釈剤などの化学洗
剤を使用しなでください。
操作
1. 製品を操作するためには、専門的な訓練と高度な集中力が必要です。製品の操作
者が、肉体的、精神的、および情緒的見地から、製品の操作に適切かどうか確認
してください。不適切な場合には、けがまたは製品への損傷の可能性があります。
製品の操作に適した要員を選択することは、雇用者/運営担当者の責務です。
2. 「輸送」セクションを確認して遵守しながら、製品の移動および輸送を行います。
3. すべての工業製品同様、通常、ニッケルなど、アレルギー症状を引き起こす物質
(アレルゲン)の使用を避けることはできません。ローデ・シュワルツの製品を
使用して皮膚に発疹ができたり、くしゃみが頻発したり、目が充血したり、また
は呼吸困難な状態など、アレルギー症状が現れた場合には、すみやかに医者に相
談し、原因を確認して、健康上の問題またはストレスを予防してください。
4. 製品の機械的処理、熱処理、または解体前に、「廃棄物処理」セクションの項目
1 を必ず確認して注意を払ってください。
5. RF 無線設備など、特定の製品の機能によっては、高レベルな電磁放射が生じる可
能性があります。胎児に対しては保護を強化する必要があるため、妊婦は適切な
方法で保護する必要があります。また、電磁放射は、ペースメーカを使用してい
る人に対しても危険を及ぼす可能性があります。雇用者/運用担当者は、電磁放射
を被ばくする危険性の高い仕事場を調査し、必要に応じて、潜在的な危険を回避
するための方策を講じる必要があります。
6. 火災が発生した場合には、健康に害を与える恐れのある有毒物質(気体、液体な
ど)が製品から流出する可能性があります。したがって、防護マスクや防護服の
装着など、適切な対策を講じる必要があります。
修理とサービス
1. 製品は、専門的訓練を受けた資格のある要員以外が開くことはできません。製品
に対して作業をする場合、あるいは製品を開く場合には、事前に、製品を AC 供
給ネットワークから切断しておかなければなりません。切断しておかないと、要
員に感電の危険が及ぶ可能性があります。
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R&S ZVH 基本的な安全指示
2. ローデ・シュワルツが許可した電気技師以外が、調整、部品の交換、保守、およ
び修理を行うことはできません。安全性に関わる部品(電源スイッチ、電源トラ
ンス、ヒューズなど)を交換する場合には、オリジナルの部品以外を使用するこ
とはできません。安全性に関わる部品を交換した場合には、必ず、安全テスト
(外観検査、PE コンダクタ・テスト、絶縁抵抗測定、漏えい電流測定、機能テス
ト)を行わなければなりません。これにより製品の安全を引き続き確保します。
バッテリと蓄電池
バッテリと蓄電池に関する情報の必要な範囲内すべてを遵守しないと、破裂や火災の
発生、または重傷や死亡の可能性があります。アルカリ性のバッテリおよび蓄電池
(リチウム電池など)は、標準規格
EN62133
に従って処理する必要があります。
1. 電池を分解したり、または破壊したりしないでください。
2. 電池またはバッテリを熱や火に近づけないでください。日光が直接当たる場所へ
の保管を避けてください。電池およびバッテリを清潔で乾いた状態で保管してく
ださい。乾いた清潔な布でコネクタの汚れを取り除いてください。
3. 電池またはバッテリを短絡させないでください。互いに短絡を起こしたり、他の
伝導体により短絡が引き起こされるため、電池またはバッテリを箱や引き出しに
保管しないでください。電池およびバッテリを使用する時まで元の梱包から取り
出さないでください。
4. 電池およびバッテリを子供の手の届かない所に保管してください。電池またはバ
ッテリを飲み込んだ場合には、すみやかに医者に相談してください。
5. 許容範囲外の強い機械的衝撃を電池およびバッテリに与えてはいけません。
6. 電池から液体が漏れている場合、その液体が皮膚または目に直接触れないように
してください。触れてしまった場合には、十分な水でその部分を洗い、医者に相
談してください。
7. アルカリ性の蓄電池またはバッテリ(リチウム電池など)は正しく交換しないと、
破裂する可能性があります。製品の安全性を確保するために、ローデ・シュワル
ツが指定するタイプに一致する電池またはバッテリ(部品リストを参照してくだ
さい)とのみ交換してください。
8. 電池およびバッテリをリサイクルして、残留廃棄物とは区別してください。鉛、
水銀、およびカドミウムを含む蓄電池および通常のバッテリは有害廃棄物です。
廃棄物処理およびリサイクルに関する国内の規則を遵守してください。
輸送
1. 製品は非常に重いため、慎重に扱う必要があります。一部では、背中や体のその
他の部分の損傷を避けるため、製品の持ち上げまたは移動には適切な方法(リフ
トトラックなど)が必要になります輸送または持ち上げる際に製品をしっかりと
固定する場合、使用者が責任を負います。輸送または持ち上げの際は、製造者の
安全規則を遵守してください。規則に従わない場合には、身体または製品への損
傷を招く可能性があります。
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R&S ZVH 基本的な安全指示
2. 車中で製品を使用する場合には、車の安全な運転については、運転者が全責任を
負うものとします。事故や衝突については、製造者は一切の責任を負わないもの
とします。車の運転者の注意力が散漫になる可能性があるため、移動中の車の中
では絶対に製品を使用しないでください。事故の際に身体またはその他への損傷
を避けるために、製品を車中で適切に固定してください。
廃棄物処理
1. 製品または構成部品に対して本来の使用目的を超えて機械的処理または熱処理を
行うと、有害な物質(鉛、ベリリウム、ニッケルなどの重金属粉)が放出される
ことがあります。このため、専門的訓練を受けた要員以外が製品を解体すること
はできません。適切に解体しないと、健康に害を与えることがあります。各国の
廃棄物処理規則を遵守しなければなりません。
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R&S ZVH 目次
目次
ドキュメントの概要 .................................................................................... 5
本書の表記について .................................................................................... 6
1 R&S ZVH の操作 ................................................................................. 7
1.1 画面のレイアウトと構成要素 ........................................................................................ 7
1.2 データの入力 ................................................................................................................. 8
1.2.1 テンキーの使用 .............................................................................................................. 8
1.2.2 入力の確定および取り消し ............................................................................................ 9
1.2.3 ロータリ・ノブの使用 ................................................................................................... 9
1.2.4 カーソル・キーの使用 .................................................................................................10
1.3 R&S ZVH のプリセット ..............................................................................................10
1.4 スクリーンショット ....................................................................................................11
1.5 測定設定 .......................................................................................................................12
1.6 ファームウェアのアップデート ..................................................................................12
1.7 ファームウェア・オプションのインストール ............................................................12
2 ケーブル/アンテナ試験モード ............................................................ 13
2.1 ケーブル/アンテナ測定の実行 .....................................................................................15
2.1.1 反射測定 .......................................................................................................................15
2.1.2 DTF 測定 ......................................................................................................................16
2.1.3 1-ポート・ケーブル・ロス測定 ...................................................................................17
2.1.4 伝送測定(R&S ZVH-K39) ........................................................................................17
2.1.5 測定フォーマットの選択 .............................................................................................18
2.1.6 測定の校正 ...................................................................................................................19
2.2 ケーブル/アンテナ試験の設定 .....................................................................................23
2.2.1 ケーブル・モデルの選択 .............................................................................................23
2.2.2 横軸の設定 ...................................................................................................................25
2.2.3 縦軸の設定 ...................................................................................................................27
2.2.4 掃引の設定とトリガ.....................................................................................................29
2.3 測定結果の分析 ............................................................................................................32
2.3.1 トレースの操作 ............................................................................................................32
2.3.2 マーカの使用 ...............................................................................................................33
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 1

R&S ZVH 目次
2.3.3 表示ラインとリミット・ラインの使用........................................................................38
3 測定ウィザードの操作方法 ................................................................. 39
3.1.1 測定の準備 ...................................................................................................................39
3.1.2 測定ウィザードの使用 .................................................................................................41
3.1.3 結果の評価 ...................................................................................................................45
4 スペクトラム・アナライザ・モード(R&S ZVH-K1) ...................... 46
4.1 スペクトラム測定の実行 .............................................................................................46
4.1.1 連続変調信号のチャネル・パワーの測定 ....................................................................46
4.1.2 占有帯域幅の測定 ........................................................................................................50
4.1.3 TDMA 信号のパワー測定 ............................................................................................53
4.1.4 隣接チャネル漏洩比(ACLR)の測定 .........................................................................56
4.1.5 スペクトラム・エミッション・マスクの測定 .............................................................64
4.1.6 高調波歪みの測定 ........................................................................................................67
4.1.7 振幅変調度の測定 ........................................................................................................68
4.1.8 スペクトログラム表示の操作(R&S ZVH-K14) .......................................................70
4.1.9 等方向性アンテナの使用 .............................................................................................78
4.2 スペクトラム測定の設定 .............................................................................................80
4.2.1 横軸の設定 ...................................................................................................................80
4.2.2 縦軸の設定 ...................................................................................................................83
4.2.3 帯域幅の設定 ...............................................................................................................87
4.2.4 掃引の設定とトリガ.....................................................................................................89
4.2.5 トレースの操作 ............................................................................................................94
4.2.6 マーカの使用 ...............................................................................................................98
4.2.7 表示ラインの使用 ......................................................................................................102
4.2.8 リミット・ラインの使用 ...........................................................................................103
4.3 チャネル・テーブルの操作 .......................................................................................105
4.4 トランスデューサ・ファクタの使用 .........................................................................106
4.4.1 トランスデューサを使用した測定の単位 ..................................................................107
4.4.2 基準レベルの設定 ......................................................................................................108
4.4.3 トランスデューサの周波数範囲 ................................................................................108
4.4.4 トランスデューサ・ファクタを含むデータセット ...................................................108
5 パワー・センサの操作 ...................................................................... 109
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 2

R&S ZVH 目次
5.1 パワー・センサの使用 ...............................................................................................109
5.1.1 パワー・センサの接続 ...............................................................................................110
5.1.2 測定の実行と設定 ......................................................................................................111
5.2 通過型パワー・センサの使用 ....................................................................................113
5.2.1 通過型パワー・センサの接続 ....................................................................................114
5.2.2 測定の実行と設定 ......................................................................................................115
6 ネットワーク・アナライザ・モード(R&S ZVH-K42) .................. 118
6.1 測定の校正 .................................................................................................................119
6.2 ベクトル測定の実行 ..................................................................................................122
6.2.1 伝送の測定 .................................................................................................................123
6.2.2 反射の測定 .................................................................................................................124
6.3 結果の評価 .................................................................................................................125
6.3.1 測定フォーマットの選択 ...........................................................................................125
6.3.2 縦軸の設定 .................................................................................................................132
6.3.3 マーカの使用 .............................................................................................................134
6.3.4 チャネル・テーブルの操作 ........................................................................................134
6.3.5 リミット・ラインの使用 ...........................................................................................134
6.3.6 トレース演算の使用...................................................................................................134
6.4 ベクトル電圧計(R&S ZVH-K45) ...........................................................................135
6.4.1 測定の校正 .................................................................................................................135
6.4.2 測定の実行 .................................................................................................................136
6.4.3 結果の評価 .................................................................................................................137
7 機器の設定と測定結果の保存および読み込み .................................. 138
7.1 データセットの保存 ..................................................................................................138
7.2 データセットのクイック・ネーミング .....................................................................140
7.2.1 ファイル名の組み立て ...............................................................................................140
7.2.2 テーブルの作成 ..........................................................................................................141
7.3 測定結果の読み込み ..................................................................................................141
7.3.1 データセットのプレビュー ........................................................................................142
7.3.2 データセットの読み込み ...........................................................................................142
7.4 データセットの削除 ..................................................................................................142
8 メニューおよびソフトキーの概要 .................................................... 143
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 3

R&S ZVH 目次
8.1.1 一般的な機能 .............................................................................................................143
8.1.2 ケーブル & アンテナ・アナライザの機能................................................................144
8.1.3 スペクトラム・アナライザの機能(R&S ZVH-K1) ................................................147
8.1.4 ネットワーク・アナライザ機能(R&S ZVH-K42) ..................................................152
8.1.5 パワー・メータの機能 ...............................................................................................155
9 スペクトラム・アナライザの仕組み ................................................ 157
索引 ................................................................ ................................ ......... 162
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 4

R&S ZVH ドキュメントの概要
ドキュメントの概要
R&S ZVH のユーザ・ドキュメントは、以下のように構成されています。
クイック・スタート・ガイド
『クイック・スタート・ガイド』には、本機の機能に関する基本的な情報が記載され
ています。
このマニュアルで取り扱っている内容は、以下のとおりです。
● フロント・パネルおよびリア・パネルの概要
● R&S ZVH の基本的な操作・設定
● R&S ZVH のネットワークへの接続
● 基本的な測定例
オペレーティング・マニュアル
『オペレーティング・マニュアル』では、本機の機能について詳しく解説しています。
このマニュアルで取り扱っている内容は、以下のとおりです。
● R&S ZVH をさまざまな動作モードで操作する方法
● R&S ZVH で測定を実施する方法
● 使用可能なソフトウェア・オプションおよびアプリケーションとの連携方法
サービス・マニュアル
『サービス・マニュアル』には、保守に関する情報が記載されています。
このマニュアルで取り扱っている内容は、以下のとおりです。
● 性能試験の実施方法
● R&S ZVH の修理と交換部品について
● 機械構造図
リリース・ノート
リリース・ノートでは、ファームウェアのインストール、新機能、改良された機能、
解消された問題、ドキュメントの最終的な変更内容について説明しています。対応す
るファームウェア・バージョンは、リリース・ノートのタイトル・ページに記載され
ています。最新のリリース・ノートはインターネットで公開されています。
インターネット・サイト
R&S ZVH ケーブル&アンテナ・アナライザ にあるインターネット・サイトには、
R&S ZVH に関する最新情報が掲載されています。ダウンロード・エリアでは、最新
のマニュアルを印刷可能な PDF 形式で提供しています。
対応するリリース・ノート、制御用ドライバ、最新のデータ・シート、アプリケー
ション・ノート、イメージ・バージョンなど、ファームウェアの最新版のダウンロー
ドも可能です。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 5

“Graphical user interface elements”
画面上およびフロント・パネル/リア・パネル上のグラフィカ
ル・ユーザ・インタフェースの構成要素であるダイアログ・ボッ
クス、ソフトキー、メニュー、オプション、ボタンなどの名前は
すべて引用符(“)で囲みます。
ユーザが入力する文字列は、イタリック体で表記します。
File names, commands,
program code
ファイル名、コマンド、プログラム・コード、およびスクリーン
表示文字は、このフォントで表記します。
クリック可能なリンクは青色で表記し、引用符(“)で囲みま
す。
R&S ZVH 本書の表記について
本書の表記について
本書では、次のテキスト書式を使用しています。
文字体裁
その他の規則
● リモート・コマンド: リモート・コマンドは、入力を簡単にするために略語が使
用されている場合があります。そのようなコマンドについては、入力する必要の
ある部分は大文字で表記し、その他の説明部分は小文字で表記しています。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 6

R&S ZVH R&S ZVH の操作
画面のレイアウトと構成要素
1 R&S ZVH の操作
この章では、R&S ZVH の基本的な機能およびユーザ・インタフェースについて説明
します。
1.1 画面のレイアウトと構成要素
以下の図に、ケーブル/アンテナ試験モード時の画面レイアウトを示します。図には、
R&S ZVH のすべての動作モードに共通する要素を示しています。動作モードや測定
によって異なる画面レイアウトについては、本書の該当する項に示してあります。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 7

R&S ZVH R&S ZVH の操作
データの入力
1.2 データの入力
R&S ZVH のユーザ・インタフェースには、データを入力するためのボタンやキーな
どがあります。
1 テンキー
2 単位キー
3 ロータリ・ノブ
4 カーソル・キー
5 “ENTER” キー
6 “CANCEL” キー
7 “BACK” キー
1.2.1 テンキーの使用
テンキーを使用して、数値や文字を入力することができます。テンキーには、0 ~ 9
の数字のほか、アルファベット、マイナス記号、ドットがあります。
数値を入力するときは、対応するキーを押します。数値の場合は、各キーの表面に印
字されている数字に対応します。
負の値の入力にはマイナス記号キーを押し、小数部を含む値の入力にはドット・キー
を押します。
文字を入力するよう求められた場合や、ファイル名などの文字を入力する必要がある
場合は、キーの割り当てが変わります。各キーには 1 つの数字と、2 つ以上の文字
が対応しています。最初に選択されるのは、文字です。文字を入力するときは、その
文字が選択されるまでキーを何回か押します。以下の表に、文字の割り当てをまとめ
てあります。
“BACK” キーを使用して、入力した文字または数字を削除することができます。
“BACK” キーを押すと、カーソルが 1 つ前の位置に戻り、その位置にあった文字が削
除されます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 8

R&S ZVH R&S ZVH の操作
2 a b c 2 A B C 3 d e f 3 D E F
7 p q r s 7 P Q R S 8 t u v 8 T U V
データの入力
1.2.2 入力の確定および取り消し
入力した内容に応じて、入力を確定する方法はいくつかあります。
● 単位のない値、または単位が固定されている値を入力フィールドに入力したとき
は、“ENTER” キーを押すかロータリ・ノブの中心を押すと、入力が確定します。
また、入力フィールドを開いたときのソフトキーを押すことで、入力を確定する
方法もあります。
● 周波数や時間など、異なる単位を設定できる値は、いずれかの単位キーを押して
確定することができます。
“ENTER” キーを押して値を確定したときは、最小の単位(例: Hz)が常に使用さ
れます。
● 誤ってサブメニューや入力フィールドを開いた場合は、“CANCEL” キーを押すと、
内容を変更せずに閉じることができます。
1.2.3 ロータリ・ノブの使用
ロータリ・ノブを使用して、さまざまな操作を行うことができます。
● ダイアログ・ボックスやソフトキーのサブメニューの中では、ロータリ・ノブは
カーソル・キーのように動作します。ロータリ・ノブを操作して、各項目に移動
できます。複数のページにまたがるダイアログ・ボックスでは、スクロールする
ことも可能です。
ロータリ・ノブを右に回すと、下方向に移動します。ロータリ・ノブを左に回す
と、上方向に移動します。
● 入力フィールドがアクティブであれば、数値をロータリ・ノブで増減させること
ができます。
ロータリ・ノブを右に回すと数値が増加し、左に回すと減少します。
ロータリ・ノブの操作によって、数値は一定のステップ幅で変更されます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 9

R&S ZVH R&S ZVH の操作
R&S ZVH のプリセット
● ロータリ・ノブの操作で、マーカの位置が移動します。
この場合も、ステップ幅は一定です。
● “ENTER” キーを押すと入力や選択が確定しますが、ロータリ・ノブを押しても確
定します。
1.2.4 カーソル・キーの使用
カーソル・キーを使用して、さまざまな操作を行うことができます。
● カーソル・キーを操作して、ダイアログ・ボックスやソフトキーのサブメニュー
の中を移動することができます。
● 入力フィールドがアクティブであれば、どのような数値も上向き/ 下向きの矢印
キーで増減できます。
カーソル・キーの操作によって、数値は一定のステップ幅で変更されます。
● 上/下の矢印キーの操作で、マーカの位置が移動します。
この場合も、ステップ幅は一定です。
● 入力フィールド内では、左/右の矢印キーの操作で、カーソルが左/右に移動します。
1.3 R&S ZVH のプリセット
測定の準備をする前に、R&S ZVH をプリセットしておくことを推奨します。プリ
セットによって、R&S ZVH のすべての設定がデフォルト値にリセットされます。デ
フォルト設定に戻すことで、それまでの設定値に影響されない測定が可能になります。
デフォルト設定は動作モードによって異なります。
► “PRESET” キーを押します。
R&S ZVH のデフォルト設定が呼び出されます。
また、ユーザ定義のデフォルト設定をデータセットから定義することもできます。そ
の場合、“PRESET” キーを押すと、工場出荷時のデフォルト設定ではなく、ユーザ定
義のデフォルト設定が読み込まれます。
► “SETUP” キーを押します。
► “User Preference” ソフトキーを押します。
► “Preset Dataset” メニュー項目を選択します。
プリセット設定に適用可能なデータセットを選択するダイアログ・ボックスが開
きます。
► 所望の設定値が入っているデータセットを選択します。
► “User Preferences” ダイアログ・ボックスで、“Preset Mode” メニュー項目を選
択します。
► ドロップダウン・メニューから “User Defined” を選択します。
この後、“PRESET” キーを押すと、データセットの設定値が読み込まれます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 10

R&S ZVH R&S ZVH の操作
スクリーンショット
1.4 スクリーンショット
キーを使用すると、現在の画面のスクリーンショットを撮って保存することがで
きます。
► キーを押します。
スクリーンショットを撮ります。
外部記憶装置として USB メモリや SD カードが接続されている場合は、USB メモ
リまたは SD カードにスクリーンショットが保存されます。両方とも接続されている
場合は、SD カードに保存されます。
外部記憶装置が接続されていない場合、スクリーンショットは R&S ZVH の内蔵メモ
リに保存されます(十分な容量が残っている場合)。その場合、R&S ZVHView ソフ
トウェアを使用して PC に画像を転送することができます。
すべてのスクリーンショットには、「Screenshot####」というデフォルト名が付けら
れます。「####」には、0000 から始まる連番が付けられます。特定の番号から始ま
るデフォルト名に変更したい場合は、“User Preference” メニューで設定します。
► “SETUP” キーを押します。
► “User Preference” ソフトキーを押します。
► “Default Filename” および “Filename Counter Starts At” を選択し、所望のファイ
ル名と番号を設定します。
スクリーンショットのファイル形式は、“User Preference” メニューの設定に従って
「*.png」または「*.jpg」となります。
► “SETUP” キーを押します。
► “User Preference” ソフトキーを押します。
► “Capture Screen Format” を選択し、スクリーンショットのファイル形式を選択し
ます。
スクリーンショットのプレビュー
スクリーンショットに必要な情報が含まれているかどうかを確認したい場合は、
R&S ZVH にスクリーンショットのプレビューを表示することができます。
► “SAVE/RECALL” キーを押します。
► “Recall Screenshot” ソフトキーを押します。
プレビューを表示するスクリーンショットを選択するダイアログ・ボックスが開
きます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 11

R&S ZVH R&S ZVH の操作
測定設定
1.5 測定設定
“Measurement Setup” ダイアログ・ボックスには、R&S ZVH の現在の設定の概要が
表示されます。このダイアログ・ボックスで設定を変更することも可能です。
► “SETUP” キーを押します。
► “Measurement Setup” ソフトキーを押します。
► 必要に応じてメニュー項目を選択し、設定を変更します。
なお、“Measurement Setup” ダイアログ・ボックスの内容は、R&S ZVH の動作モー
ドごとにカスタマイズされています。そのため、表示される設定の順番と数は、モー
ドごとに異なります。
1.6 ファームウェアのアップデート
新しいバージョンのファームウェアは、R&S ZVH の Web サイトからダウンロード
することができます。この Web サイトには、新しいバージョンのファームウェアの
リリース・ノートが掲載されています。
リリース・ノートには、ファームウェアのアップデート方法が説明されています。
1.7 ファームウェア・オプションのインストール
動作モードの追加や特殊な測定に対応するために、R&S ZVH にファームウェア・オ
プションを搭載することができます。
詳細については、『クイック・スタート・ガイド』を参照してください。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 12

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ファームウェア・オプションのインストール
2 ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ試験(CAT)モードでは、無線通信システムに使用する伝送機器の
ケーブルとアンテナを測定することができます。
完全なシステムでは、信号は損失することなくアンテナに到達し、必要なパワーと周
波数で伝送されます。しかし、実際には、伝送品質が低下する原因となるさまざまな
機械的障害がシステム内に潜在していることがあります。以下の図に、伝送システム
内で想定される主な障害を示します。
R&S ZVH には、システム機器の設置や保守の作業時に特性試験を実施し、障害箇所
を特定するのに必要な機能が備えられています。本機の各種測定機能によって、さま
ざまな面から試験を行うことができます。
● “反射測定” (2 ページ)
● “故障点測定” (2 ページ)
● “1-ポート・ケーブル・ロス測定” (2 ページ)
● “伝送測定(R&S ZVH-K39)” (2 ページ)
試験セットアップ
ケーブルとアンテナの試験を実行するための試験セットアップには、R&S ZVH、RF
試験ケーブル(R&S FSH-Z320 など)、校正スタンダード(R&S FSH-Z28 または
R&S FSH-Z29)、および被試験ケーブル(DUT)を使用します。
ケーブルとアンテナの試験には、R&S ZVH のハードウェアに組み込まれているト
ラッキング・ジェネレータも必要になります。トラッキング・ジェネレータが発生し
た基準信号が内蔵 VSWR ブリッジを経由してテスト・ポートに伝送されます。
► RF ケーブルを RF 入力(ポート 1 または 2)に接続します。
► 試験ケーブルを RF ケーブルに接続します。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 13

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ファームウェア・オプションのインストール
► 外部からの電圧源を必要とする DUT (パワー・アンプなど)の場合は、適合す
る AC 電源ユニットからの供給電圧を BIAS ポート 1 に接続します。内蔵バイ
アスを使用することもできます。
デフォルトでは、R&S ZVH の電源を入れると、ケーブル試験モードになります。そ
の他の動作モードから CAT モードに切り替えるには、以下の手順に従ってください。
► “MODE” キーを押します。
► “Antenna & Cable Test” ソフトキーを押します。
アンテナ/ケーブル試験モードになります。
デフォルトでは、ポート 1 で測定が実行されます。ポート 2 での測定にも対応して
いますが、そのための設定を先にしておく必要があります。
► “MEAS” キーを押します。
► “Select Driving Port” ソフトキーを押します。
► “Port 1” または “Port 2” のメニュー項目を選択します。
ケーブル & アンテナ・アナライザの画面レイアウト
1 ケーブル・モデル
2 ハードウェアの設定
3 マーカ情報
4 ステータス・ライン
- S パラメータ
- 校正ステータス
- 測定フォーマット
5 トレース・ウィンドウ
6 マーカ(青色の線)
7 ケーブル長情報
8 ケーブル周波数情報
9 ケーブル試験用のソフトキー・メニュー
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 14

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1 ケーブル/アンテナ測定の実行
伝送システムに内在する問題点を可能な限り正確に把握するために、R&S ZVH では
さまざまな測定を実行できます。これらの測定を実行することによって、ケーブル特
性をさまざまな面から捉えます。
2.1.1 反射測定
反射(S11)測定を実行すると、伝送システムが正常に機能しているかどうかをよく
把握できます。異常なパワーの信号が反射されている場合は、システム内に何らかの
不具合があると推測できます。反射測定では、指定した周波数範囲内で反射の振幅が
dB 単位で表示されるため、効果的に反射を検出できます。
反射測定は、デフォルトの測定となっています。
► “MEAS” キーを押します。
► “Reflection (S11)” ソフトキーを押します。
設定した周波数範囲で反射測定が行われます。
以下の図は、ケーブルやアンテナに大きな障害がない状態で反射測定を実行したとき
の例です。
反射測定は、システム全体を対象にしても、システムの個々のコンポーネントを対象
にしても実行することができます。2 つ以上のシステム・コンポーネントが接続され
ている状態で測定した場合、反射測定の結果はコンポーネント全体の合計になります。
そのため、指定した周波数範囲の反射パワーの総計のみを確認できます。
どのコンポーネントに不具合があるのかを判別し、障害の位置を特定するためには、
他の測定を使用してさらに解析を進める必要があります。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 15

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1.2 DTF 測定
DTF(故障点)測定を実行すると、伝送システムにおいて障害の可能性がある位置を
正確に特定することができます。ケーブルの一方の端を R&S ZVH に接続して、DTF
測定を行うと、障害の原因にかかわらず障害箇所までの正確な距離(メートルまたは
フィート単位)が示されます。また、障害の程度も dB 単位で示されます。これらの
情報から、障害のあるコンポーネント、およびその重大度を判別することができます。
ケーブルの障害箇所までの距離を判定するために、R&S ZVH では被試験ケーブルの
反射を周波数軸で測定します。まず、特定の周波数に関し、反射信号の位相とトラッ
キング・ジェネレータで発生した基準信号の位相を比較することで、反射の振幅を測
定します。次に、受信した信号に対して高速逆フーリエ変換(IFFT)を実行します。
ケーブル・モデルの特性と組み合わせることで、反射信号がたどった距離を特定する
ことができます。
周波数軸での測定と、IFFT で高い感度が得られるため、ケーブル内の障害位置を正
確に特定することができます。この確度を維持するために、R&S ZVH ではケーブル
の距離による減衰も考慮に入れています。
ケーブルを単体で測定する場合は、必ず他方の端をロードで終端してください。
► “MEAS” キーを押します。
► “Distance to Fault” ソフトキーを押します。
ケーブルの障害箇所までの距離が計算されます。
DTF 測定の結果を以下の図に示します。トレース上で各マーカ位置に示されている
ピークが、障害の疑いのある箇所です。また、距離によっては、障害のあるコンポー
ネントを把握することも可能です。
例えば、マーカ 1 はケーブルの損傷を示しています。マーカ 2 は、ケーブル端での
接続不良や接続の緩みなどの障害を示しています。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 16

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1.3 1-ポート・ケーブル・ロス測定
ケーブル・ロス測定では、指定した周波数範囲におけるケーブルのパワー減衰を dB
単位で評価します。減衰するパワーの量は、周波数およびケーブルの長さに依存しま
す。
► “MEAS” キーを押します。
► “1-Port Cable Loss” ソフトキーを押します。
設定した周波数範囲でのケーブル・ロス測定が行われます。
以下の図は、ケーブル・ロス測定の典型的な結果を示すもので、損失の振幅が徐々に
減少していることがわかります。
2.1.4 伝送測定(R&S ZVH-K39)
R&S ZVH にオプション R&S ZVH-K39(オーダー番号 1309.6830.02)をインストー
ルすると、順方向の伝送測定(S21)を実行できます。
順方向の伝送測定を実行すると、信号が損失なしに伝送路を通過できるかどうかを評
価することができます。伝送測定では、指定した周波数範囲内で反射の振幅が dB 単
位で表示されるため、障害を検出する手段として効果的です。
伝送測定は、主に、フィルタの通過特性を試験したり、2 本のアンテナ(例えば 2
本の受信用アンテナ、または受信用アンテナと送信用アンテナ各 1 本)の間のアイソ
レーションを試験するために使用されます。
► “MEAS” キーを押します。
► “Transmission (S21)” ソフトキーを押します。
設定した周波数範囲での順方向の伝送測定が行われます。
フィルタの伝送測定を実行したときの結果を以下の図に示します。この結果から、
フィルタが所定の動作を行っていることが示されています。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 17

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1.5 測定フォーマットの選択
測定ごとに、測定フォーマットを選択することができます。縦軸に結果を表示する方
法が、測定フォーマットにより選択されます。
R&S ZVH の CAT モードでは、以下の測定フォーマットがあります。
● 振幅(dB Mag)
デフォルトのフォーマットです。結果の振幅を dB 単位で表示します。
● VSWR
直交座標で定在波比を表示します。VSWR は、伝送線路で発生する最大電圧と最
小電圧との比率です。VSWR は DTF 測定および反射測定に使用できます。
● 反射係数
被測定物の反射係数を表示します。
反射係数は、伝送線路で発生する反射波の振幅と入射波の振幅との比率です。
● ケーブル・ロス(ショート + オープン)/2
このフォーマットは、ケーブル・ロスを計算するための方法です。
このフォーマットを選択すると、測定をショートとオープンで校正するよう求め
られます。このケーブル・ロスの計算方法により、ケーブル・ロス曲線の表示確
度が向上し、測定誤差を防止できるようになります。
ケーブル・ロス測定の詳細については、2 ページの “1-ポート・ケーブル・ロス
測定” を参照してください。
以下に、反射測定の結果を振幅(左側)と VSWR (右側)のフォーマットで表示し
た場合を示します。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 18

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1.6 測定の校正
校正スタンダードとして、R&S FSH-Z28(オーダー番号 1300.7804.03)、
R&S FSH-Z29(オーダー番号 1300.7504.03)、R&S ZV-Z121(オーダー番号
1164.0496.02 または 1164.0496.03)が用意されています。そのいずれかを使用する
必要があります。
また、ネットワーク・アナライザを操作するときは、R&S ZVHView ソフトウェアを
利用してカスタマイズした校正キットを作成し、R&S ZVH に使用することも可能で
す。
試験セットアップを正しく校正するためには、校正スタンダードを基準面(通常は
RF 測定ケーブルの出力)に接続する必要があります。
R&S ZVH の全周波数範囲で校正を実行します。これにより、パラメータを変更した
り、別の被測定物(ケーブル)を選択しても、改めて校正を実行する必要がありませ
ん。
校正データは R&S ZVH の内蔵メモリに保存されているため、R&S ZVH の電源をオ
フにしたり動作モードを切り替えても、校正は有効です。
2.1.6.1 校正の状態
R&S ZVH にはさまざまな校正の状態があり、ステータス・ラインに表示されます。
どのような状態が可能であるかは、校正の種類によります(下記を参照)。
● “(fcal)”
R&S ZVH で、工場出荷時の校正を使用します。プリセットやセルフ・アライン
メントの後に、工場出荷時の校正がリコールされます。
工場出荷時の校正に関する校正データは、R&S ZVH の納入時にすでに内蔵メモ
リに保存されています。工場出荷時の校正は、フル 2 ポート校正です。
工場出荷時の校正は、いつでもリコールすることができます。
- “CAL” キーを押します。
- “Cal Settings” ソフトキーを押します。
- “User Calibration Off” メニュー項目を選択します。
CAT モードでプリセットを実行すると、全周波数範囲のユーザ校正が破棄されま
す。ただし、プリセット後もユーザ校正を保持するように指定することも可能で
す。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 19

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
- “SETUP” キーを押します。
- “User Preference” ソフトキーを押します。
- “Discard User Calibration” メニュー項目を選択します。
- このメニュー項目を “Off” にします。これで、プリセット後にユーザ校正が
保持されるようになります。
● “(fcal?)”
R&S ZVH で、工場出荷時の校正を使用します。ただし、トラッキング・ジェネ
レータのパワーと RF 入力での減衰量がデフォルト設定と一致していないため、
校正の確度は高くありません。確度が低い場合は、校正を実行してください。
● “(cal)”
R&S ZVH で、ユーザ校正を使用します。フル 1 ポートまたはフル 2 ポートの
校正を実行する必要があります。
● “(cal?)”
R&S ZVH で、ユーザ校正を使用します。ただし、TG パワーとレシーバ減衰が前
回校正時の設定と一致していないため、校正の確度は高くありません。確度が低
い場合は、校正を実行してください。
● “(norm)”
R&S ZVH で、ノーマライズを使用します。伝送をノーマライズする必要があり
ます。
● “(norm?)”
R&S ZVH で、ノーマライズを使用します。ただし、トラッキング・ジェネレー
タのパワーと RF 入力での減衰量が前回校正時の設定と一致していないため、
ノーマライズの確度は高くありません。確度が低い場合は、校正を実行してくだ
さい。
● (interp)
R&S ZVH で、校正の基準ポイント間で補正データを補間します。その理由は、
R&S ZVH が校正された周波数範囲内において周波数パラメータの 1 つ(下限周
波数、上限周波数、または中心周波数)が、校正時に使用していたパラメータか
ら変更されているためです。その結果、測定の不確かさが大きくなる恐れがあり
ます。
何らかの理由で校正が無効になったとき、または校正データが変更されたときは、直
前に有効であった校正をリコールすることができます。
► “CAL” キーを押します。
► “Cal Settings” ソフトキーを押します。
► “Restore Calibration Settings” メニュー項目を選択します。
直前に有効であった校正データと周波数設定がリコールされます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 20

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
ケーブル/アンテナ測定の実行
2.1.6.2 校正方式
アンテナ/ケーブル試験モードでは、以下の種類の校正を使用できます。
● フル 2 ポート(“Full 2-Port”)
両方のテスト・ポートが、一連の測定に関して校正されます。そのため、校正
ルーチンでは、ロード、オープン、ショートの各スタンダードを両方のテスト・
ポートへ接続すること、および両方のテスト・ポートのスルー接続が必要になり
ます。これにより、試験セットアップの影響、およびテスト・ポート間のアイソ
レーションの影響が定量化され、その後の測定においてこれらの影響が考慮され
ます。
この校正方式は他の方式よりも時間がかかりますが、両方のテスト・ポートにお
いてすべての測定に対して最高の確度が得られ、再校正の必要もないため、最も
柔軟な校正方式となっています。
● フル 2 ポート高確度(“Full 2-Port High Accuracy”)
フル 2 ポート校正と同様に、両方のテスト・ポートが校正されます。さらに、
ロード・マッチがより高い確度で考慮され、補正データが順方向、逆方向の両方
に適用されます。
この方式は、通常のフル 2 ポート校正よりもさらに確度の高い結果が得られます。
ただし、終了するまでの時間が少し長くなります。
● フル 1 ポート(“Full 1-Port”)
テスト・ポート 1 が、そこでの測定に関して校正されます。校正ルーチンでは、
オープン、ショート、ロードの各校正スタンダードを接続する必要があります。
● 簡易 1 ポート(“Easy 1-Port”)
テスト・ポート 1 が、そこでの測定に関して校正されます。オープンのみを校正
するため、校正スタンダードは不要です。
● 伝送のノーマライズ(“Normalize Transmission”)
両方のテスト・ポートが、伝送測定に関して校正されます。校正ルーチンでは、
スルー接続のみが必要になります。その後の測定においてテスト・ポート間のア
イソレーションは考慮されないため、試験セットアップでのテスト・ポート間の
クロストークの可能性は排除されません。
● アイソレーションを用いた伝送のノーマライズ(“Normalize Transmission
Isolation”)
この校正方式は、ノーマライズと同じように機能します。ただし、アイソレー
ションを考慮に入れるために、ロード・マッチも必要になります。
2.1.6.3 フル 2 ポート校正の実行
以下に、フル 2 ポート校正ルーチンの実行手順を示します。その他の校正方式も、必
要となる校正スタンダードの種類と数が異なる点以外は、基本的に同じです。
► RF ケーブルから被測定物を取り外します。
被測定物を取り外すと、R&S ZVH を校正できるようになります。
► “CAL” キーを押します。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 21

R&S ZVH ケーブル/アンテナ試験モード
► “Full 2-Port” ソフトキーを押しま
す。
ポート 1 にオープン(“OPEN”)
の接続を促すメッセージが表示さ
れます。
► “Continue” ソフトキーを押して校
正を開始します。
オープン(“OPEN”)の校正が完了
します。
► オープン(“OPEN”)を取り外しま
す。
次に、ポート 1 にショート
(“SHORT”)の接続を促すメッ
セージが表示されます。
次に、ポート 1 にロード(“LOAD”)
(50 Ω 終端)の接続を促すメッセー
ジが表示されます。
次に、ポート 1 とポート 2 のスルー
(“THROUGH”)接続を促すメッセー
ジが表示されます。
ケーブル/アンテナ測定の実行
► 校正スタンダードのオープン(“OPEN”)をポート 1 にしっかりと接続します。
► “Cancel” ソフトキーを押せば、いつでも校正を中止できます。
► 校正スタンダードのショート(“SHORT”)をポート 1 にしっかりと接続します。
► “Continue” ソフトキーを押して校正を開始します。
ショート(“SHORT”)の校正が完了します。
► ショート(“SHORT”)を取り外します。
► 校正スタンダードのロード(“LOAD”)をポート 1 にしっかりと接続します。
► “Continue” ソフトキーを押して校正を開始します。
ロード(“LOAD”)の校正が完了します。
► ロード(“LOAD”)を取り外します。
► しっかりとスルー(“THROUGH”)接続を接続します。
► “Continue” ソフトキーを押して校正を開始します。
スルー(“THROUGH”)接続の校正が完了します。
校正ルーチンの完了後、校正が終了したことが表示されます( )。
ステータス・ラインに、校正が正常に終了したことを示す “(cal)” が表示されます。
オペレーティング・マニュアル 1309.6946.18 - 04 22