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ユーザー ガイド
シックス シグマでの
@RISK の使用
バージョン 5.5
2009 年 6 月
Palisade Corporation
798 Cascadilla St.
Ithaca, NY 14850
USA
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著作権表記
Copyright © 2009, Palisade Corporation.
商標について
Microsoft、 Excel、 Windows は Microsoft Corporation の登録商標です。
IBM は International Business Machines, Inc. の登録商標です。
Palisade、 TopRank、 BestFit、 RISKview は Palisade Corporation の登録商標です。
RISK は Tonka Corporation の一部である Parker Brothers の商標であり、商標保有者の許
可を許に使用されています。
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ようこそ
世界で最も強力なリスク分析ツールである、@RISK へようこそ。
@RISK は、過去何年にもわたり、リスクや不確実性を分析するため
のツールとして、さまざまな業界で用いられてきました。金融、石油
・ガス、保険業、製造、ヘルスケア、製薬、科学といった業界で導入
されている @RISK は、Excel 同様の柔軟性を備えており、費用の概算
や正味現在価値および投資収益率の分析、リアル オプションの検討
、価格の設定、原油などの資源発掘計画といった幅広い用途で、日々
多くのプロフェッショナルによって用いられています。
@RISK の重要な利用シーンとしては、シックス シグマ分析と品質分
析が挙げられます。DMAIC や DFSS (Design for Six Sigma)、リーン
プロジェクト、実験計画法 (DoE)、あるいは他の分野においては、シ
ックス シグマ分析の中核をなすように不確実性と変数が存在します
。@RISK はモンテ カルロ シミュレーションを利用して、製作プロセ
スやサービス プロセスに存在する流動性の原因を特定、定量化、追
跡することができます。また、充実した能力指標群によって、あらゆ
るシックス シグマ手法を素早くかつ正確に実践するために必要な、
すべての計算が可能になります。シックス シグマ統計を分かりやす
く表示するための図や表なども充実しているので、このパワフルなテ
クニックを手軽に、かつ効率よく経営陣に提示することができます。
@RISK インダストリアル版には、シックス シグマ分析時において、
プロジェクトの選択やリソース配分の最適化を可能にする、
RISKOptimizer も含まれています。
@RISK はエンジン メーカーから貴金属、航空、消費者商品に至るま
でのさまざま業界で日々使用されており、各種プロセスの改善、商品
およびサービスの品質向上を通じたコスト ダウンにも貢献していま
す。このユーザー ガイドでは、@RISK のシックス シグマ関数、統計
、図やレポートなどを紹介し、@RISK がいかにシックス シグマ プロ
ジェクトのさまざま場面で活躍できるかを解説することにします。ま
た、このガイドにはサンプル ケース スタディも収録されており、こ
れらのサンプルには、読者の分析用としても転用できる既製のモデル
が含まれています。
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分布関数の入力、分布へのデータ フィット処理、シミュレーション
の実行および感度分析の実行といった @RISK の標準的な機能性は、
シックス シグマのモデルでも有効です。モデルで @RISK のシックス
シグマ機能を使用するにあたっては、@RISK for Excel ユーザー ガイ
ドまたはオンライン トレーニング資料を参照して、@RISK の標準的
な機能を使いこなせるようにしておくことをお勧めします。
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目次
第 1 章: @RISK とシックス シグマ手法の概要 1
はじめに................................................................................................3
シックス シグマの方法論 .....................................................................7
@RISK とシックス シグマ.................................................................11
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 15
はじめに..............................................................................................17
RiskSixSigma プロパティ関数..........................................................19
シックス シグマ統計関数 ...................................................................23
シックス シグマと [結果サマリー] ウィンドウ..................................35
グラフに表示されるシックス シグマ マーカー .................................37
ケース スタディ 39
サンプル 1 — 実験計画法 (DoE): カタパルト....................................41
サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接...............................................47
サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用..............................53
サンプル 4 — DFSS: 電子回路の設計................................................59
サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロセス
.........................................................................................................61
サンプル 6 — DMAIC: RTY (Roll Through Yield) 分析....................71
目次 v
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サンプル 7 — 納入業者の選定 ........................................................... 75
サンプル 8 — シックス シグマ DMAIC 不適合率.............................. 79
サンプル 9 — シックス シグマ RiskTheo 関数を用いた不適合率の判定
........................................................................................................ 83
vi はじめに
Page 7
第 1 章: @RISK とシックス シグ
マ手法の概要
はじめに................................................................................................3
シックス シグマとは?...............................................................................3
ばらつきの重要さ......................................................................................5
シックス シグマの方法論 .....................................................................7
シックス シグマ / DMAIC.......................................................................7
DFSS (Design for Six Sigma).................................................................7
リーンおよびリーン シックス シグマ ....................................................8
@RISK とシックス シグマ .................................................................11
@RISK と DMAIC..................................................................................11
@RISK と DFSS (Design for Six Sigma)............................................12
@RISK とリーン シックス シグマ ........................................................13
@RISK 5.0 Help System © Palisade Corporation, 1999
第 1 章 : @RISK とシックス シグマ手法の概要 1
Page 8
2 はじめに
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はじめに
競争が激しい今日のビジネス環境においては、これまでになく品質が
重要になっています。この状況で活躍できるのが、シックス シグマ
および品質保証の専門家の良きパートナーである @RISK です。この
パワフルなソリューションがあれば、プロセスや各種デザインに存在
するさまざまな流動性の影響を素早く分析できます。
@RISK は、シックス シグマ分析や品質分析だけでなく、不確実性の
伴うあらゆる状況を分析するために利用できます。正味現在価値や投
資収益率の分析、リアル オプションの検討、コスト概算、ポートフ
ォリオ分析、石油・ガス探査、保険支払準備金、価格設定など、さま
ざまな使用ケースが存在します。@RISK の他の使用例や一般的な使
用法について詳しくは、@RISK ソフトウェア付属のユーザー ガイド
を参照するようにしてください。
シックス シグマとは?
シックス シグマは、プロセスのばらつきを減らすことでプロセスを
体系的に改善し、不良品の発生を防ぐことを可能にする、一連の手法
です。ここでいう不良品とは、所定の仕様規格を満たさない製品およ
びサービスのことを指しています。シックス シグマ方法論の詳細は
、1980 年代半ばにモトローラ社によって開発されました。シックス
シグマは、QC (品質管理)、TQM (総合的品質管理)、不良品ゼロ (運
動) といった、それ以前の 60 年間に登場した数々の品質改良手法に多
大な影響を受けています。シックス シグマでは、それ以前の方法論
同様に以下の事柄が主張されています。
• ビジネス面での成功の鍵を握るのは、プロセスのアウトプットの
ばらつきを抑えるための継続的な努力
• 製造プロセスおよび各種ビジネス プロセスは定量化、分析、改善
、および制御することが可能
• 持続的な品質改善を実現するには、特に経営首脳陣も含めた、全
組織挙げての参加体制が不可欠
シックス シグマはデータに基づく手法であり、X 変数および Y 変数
という表現が頻繁に用いられます。X 変数は単に独立したインプット
変数であり、それに依存するアウトプット変数の Y に影響を及ぼし
ます。シックス シグマでは、X 変数の特定と X 変数のばらつきの制
御に重点をおくことで、Y 変数の品質の最大化とばらつきの最小化を
目指します。
第 1 章: @RISK とシックス シグマ手法の概要 3
Page 10
シックス シグマ (6σ) という名前は、それ自体を的確に表しています
。ギリシャ文字のシグマ (σ) は、ばらつき具合を示す重要な基準であ
る標準偏差を表しています。プロセスのばらつきとは、すべてのアウ
トプットがどの程度、平均の近くに存在するかを表すものです。これ
により、不良品が発生する確率を概算し、「シグマ レベル」で表す
ことが可能になります。シグマ レベルが高ければ高いほど、そのパ
フォーマンスも高くなります。シックス シグマは、プロセスの中心
となる平均と最も直近の規格限界 (またはサービス レベル) の間が 6σ
(標準偏差) の状態であることを意味します。つまり、これは 100 万点
あたりの欠陥数が 3.4 以下 (DPMO = 3.4) の状態です。シックス シグ
マをグラフ化したものを、次の図に示します。
-3 -4 -5
平均を中心としたシックス シグマ (標準偏差
-2
-1
+1
6
以内
+4 +3 +2
+5
)
企業がシックス シグマを導入することによるコスト ダウンおよび品
質改善は、特筆に値します。モトローラ社では、1980 年半ばにシッ
クス シグマを導入してからの節約額が 170 億ドルにも上っているこ
とを発表しています。Lockheed Martin、GE、Honeywell などの数
多くの企業も、シックス シグマを導入することで、さまざまなメリ
ットを享受することができています。
4 はじめに
+6
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ばらつきの重要さ
シックス シグマ実践者の多くは、プロセスやデザインに潜む不確実
性や可変性を考慮しない、固定的なモデルを使用しがちです。最大限
の品質を目指すのであれば、可能な限り多くのシナリオを検討するこ
とが必然的に求められます。
このような場面で活躍できるのが @RISK です。@RISK はモンテ カル
ロ シミュレーションを利用して、膨大な数の可能なアウトプットを
分析できるとともに、各アウトプットが発生する確率を示すことがで
きます。不確実な要素は、当該入力の可能値の範囲を厳密に定義する
ことが可能な、35 種類の確率分布関数を利用して定義できます。し
かも、@RISK では各値の USL (上方規格限界)、LSL (下方規格限界)
およびターゲット値が定義できるとともに、アウトプット用として多
彩なシックス シグマ関数と能力指標が用意されています。
また、@RISK インダストリアル版には、モンテ カルロ シミュレーシ
ョンのパワーと遺伝子アルゴリズム ベースの最適化がもたらすメリ
ットの両方が備わった RISKOptimizer も含まれています。このコン
ビネーションにより、不確実性が内在する次のような最適化課題に取
り組めるようになります。
• コストを最小限に抑えるためのリソース分配
• 利益を最大限に高めるためのプロジェクト選定
• 生産高の最大化またはコストの最小化を目指したプロセスの設定
最適化
• 品質を最大限に高めるための許容誤差の最適化
• サービスを最大限に高めるためのスタッフ スケジュール最適化
第 1 章 : @RISK とシックス シグマ手法の概要 5
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6
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シックス シグマの方法論
@RISK は、多種多様なシックス シグマ分析およびそれに関係した分
析に使用することができます。主な分析分野としては、次の 3 つが挙
げられます。
• シックス シグマ / DMAIC / DoE
• DFSS (Design for Six Sigma)
• リーンおよびリーン シックス シグマ
シックス シグマ / DMAIC
一般的にシックス シグマと呼ばれるのは、DMAIC 手法を指している
ことが大半です。DMAIC 手法は、すでに商品またはプロセスが存在
するものの、これらが顧客の仕様規格を満たしていなかったり、十分
な成果を上げられていないケースでの使用に適しています。
DMAIC では、製造プロセスやサービス プロセスの進化および継続的
な改善に重点がおかれます。DMAIC は、ほぼ例外なく、定義
(Define)、測定 (Measure)、分析 (Analyze)、改善 (Improve)、管理
(Control) の 5 つのフェーズから構成されています。
1) 定義。プロジェクトのゴールおよび顧客 (内部および外部の
VOC) の要件を定義
2) 測定。現在のパフォーマンスを把握するためにプロセスを測
定
3) 分析。不良を起こす根源的な原因を分析・特定
4) 改善。不良の根源的な原因を排除してプロセスを改善
5) 管理。将来のプロセス パフォーマンスを管理
DFSS (Design for Six Sigma)
DFSS は、製品またはサービスをいちから設計開発・再開発する際に
用いられる手法です。DFSS 製品・サービスのプロセス シグマ レベ
ルは、最低 4.5 (1,000 点あたりの欠陥数が 1 以下) であることが求め
られます。ただし、製品によっては、6 シグマまたはそれ以上のケー
スもあります。製品・サービスのローンチ段階において、このような
低い不良レベルを達成するには、デザインが完成・実用される前に、
あらかじめ顧客の要求とニーズ、つまり CTQ (Critical-To-Qualities)
を完全に理解する必要があります。DFSS 手法で成功を収めた場合、
第 1 章: @RISK とシックス シグマ手法の概要 7
Page 14
計画段階での無駄・浪費が低減できるとともに、製品の市場投入速度
を速めることができます。
DMAIC 手法とは異なり、DFSS を構成するフェーズおよびステップ
の定義は一般的に統一されているわけではありません。DFSS を導入
する企業やトレーニング組織ごとに、DFSS の定義が異なるといって
も過言ではありません。DFSS の手法として人気を博しているのは、
DMAIC と同じ頭文字数、フェーズ数および同様の感覚を採用する、
DMADV と呼ばれる手法です。DMADV の 5 つのフェーズは、次に
挙げる、定義 (Define) 、測定 (Measure) 、分析 (Analyze) 、設計
(Design) 、確認 (Verify) から構成されています。
1) 定義。プロジェクトのゴールおよび顧客 (内部および外部の
VOC) の要件を定義
2) 測定。顧客のニーズと仕様を測定・特定するととに、競合他
社および業界のベンチマークを測定
3) 分析。顧客のニーズを満たすためのプロセス オプションを分
析
4) 設計。顧客のニーズを満たすためのプロセス オプションを (
詳細に ) 設計
5) 確認。デザインのパフォーマンスおよび顧客ニーズへの適合
度を確認
リーンおよびリーン シックス シグマ
「リーン シックス シグマ」は、(トヨタによって提唱された) リーン
生産方式とシックス シグマの統計手法を融合したツールです。リー
ン手法では、無駄を減らし、無価値なステップを排除することで、プ
ロセスのスピード改善が目指されます。またリーン手法では、顧客の
「プル」戦略が重視され、ジャスト イン タイム (JIT) での供給が要求
される製品のみが生産されます。シックス シグマでは、顧客の立場
で重要な品質を左右する、プロセスの特定の部分に注目し、このプロ
セスのばらつきを排除することで、全体的なパフォーマンスが改善さ
れます。サービス業界などでは、すでにシックス シグマの高品質と
リーン手法の能率化を融合したリーン シックス シグマが導入されて
います。
リーンでは、通常 1 週間ほどの期間で実施される集中的な改良セッシ
ョンの「カイゼン活動」を通じて、改善機会が素早く見い出されます
。またリーンは、バリュー ストリーム マップを使用する点において
、従来のプロセス マップよりさらに踏み込んだ内容になります。シ
ックス シグマでは、形式的な DMAIC 手法を用いることで、測定お
よび反復可能な結果がもたらされます。
8 シックス シグマの方法論
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リーンとシックス シグマはいずれも、ビジネスが顧客のニーズに始
まり、そして最終的な製品またはサービスを使用する顧客が満足をす
るためのプロセスによって構成されるという視点に基づいて、開発・
提唱されています。
第 1 章: @RISK とシックス シグマ手法の概要 9
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10
Page 17
@RISK とシックス シグマ
DMAIC、実験計画法 (DoE)、リーン シックス シグマのどの手法にし
ても、シックス シグマ分析の根底には必ず不確実性と可変性が存在
しています。@RISK はモンテ カルロ シミュレーションを利用して、
製作プロセスやサービス プロセスに存在する流動性の原因を特定、
定量化、追跡することができます。@RISK は、先述のどのシックス
シグマ手法においても、分析のさまざまな段階において数々のメリッ
トを提供することができます。
@RISK と DMAIC
@RISK は、ばらつきを考慮したり、既存製品の問題箇所を特定する
ために、DMAIC プロセスの各ステージで活躍することができます。
1) 定義。顧客のニーズやビジネス戦略を考慮しながら、プロセ
スの改善目標を定義。バリュー ストリーム マップの作成、
費用概算、CTQ (Critical-To-Quality) 要因の特定など、
@RISK はさまざまな場面で重点箇所の割り出しと目標制定を
支援することができます。@RISK の感度分析機能を利用すれ
ば、最終的な収益性に影響を及ぼす CTQ に手軽に迫ること
もできます。
2) 測定。現況のパフォーマンス レベルおよびそれらのばらつき
を測定。各種パフォーマンスのばらつきを正確に表現できる
よう、分布のフィット処理機能と 35 種類にも上る確率分布が
用意されています。@RISK シミュレーションから得られた統
計データは、分析フェーズの要件と比較・照合できます。
3) 分析。分析フェーズでは、さまざまな関係や不良の原因を検
証するとともに、すべての要因が考慮されているかどうかを
確認。ここでは @RISK シミュレーションを利用することで
、すべてのインプット要因が考慮されるとともに、すべての
可能なアウトプットが示されるようになります。感度分析、
シナリオ分析、および許容誤差の分析などを利用して、ばら
つきの原因要素やリスクを特定することができます。また、
測定値と規格値の差を示す能力指標を、@RISK のシックス シ
グマ統計関数を利用して算出することもできます。能力指標
を算出すれば、製品またはプロセスの不良発生頻度を把握し
、これらの信頼度を確認することができます。
第 1 章: @RISK とシックス シグマ手法の概要 11
Page 18
4) 改善。実験計画法 (DoE) などの手法を用いた分析に基づいて
、プロセスを改善または最適化。実験計画法では、実験者が
その要因の完全な制御性を有しているかどうかを問わず、ば
らつきが存在するすべてのデータ取得可能な実験の計画が含
まれます。@RISK シミュレーションを使用すれば、さまざま
な組み合わせの実験を行ったり、プロセスの変化を実験する
ことができます。また、このフェーズでは、信頼度分析やリ
ソースの最適化 (RISKOptimizer を使用) にも @RISK が用い
られます。
5) 管理。ばらつきが不良の原因になる前に、そのばらつきが解
消されていることを管理・確認。管理フェーズでは、プロセ
ス能力を把握するための試行を実施し、本運用へと移行した
後は継続的にプロセスの測定を行うとともに、管理機構を策
定するようにします。@RISK は品質のスタンダードと顧客ニ
ーズが確実に満たされるよう、プロセス指標を自動的に計算
するとともにモデルの有効性を検証することができます。
@RISK と DFSS (Design for Six Sigma)
シックス シグマにおける @RISK の最も重要な使用ケースは、新規プ
ロジェクトの計画段階における DFSS です。実際の製造モデルやサー
ビス モデル・プロトタイプを用いてさまざまなプロセスを実験する
ようなことは、費用面から考えても現実的ではありません。@RISK
があれば、物理的なシミュレーションに伴う費用や時間をかけること
なく、エンジニアが数千種類にも上るモデルのアウトプットをシミュ
レーションしてみることができます。@RISK は DMAIC の各フェー
ズで活躍できるのと同じように、DFSS の各ステージでも活用できま
す。DFSS で @RISK を使用することによって、エンジニアは以下の
メリットを享受できます。
• さまざまなデザインの試行 / 実行計画法 (DoE)
• CTQ の特定・割り出し
• プロセス指標の予測
• 製品のデザイン制約事項の把握
• 費用の概算
• プロジェクトの選択 ― RISKOptimizer を用いて最適なポートフ
ォリオを把握
• 統計学的な公差解析
• 資源配分 ― RISKOptimizer を用いて効率を最大化
12 @RISK とシックス シグマ
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@RISK とリーン シックス シグマ
@RISK は、リーンとシックス シグマが融合した手法の良きパートナ
ーです。「品質のみ」のシックス シグマ モデルは、単一ステップの
プロセスや顧客への付加価値が伴わないプロセスのばらつきを減らし
たい場面では有効ではないことがあります。例えば、シックス シグ
マ分析の結果、不良ユニットを検出するために、製造工程に新たな検
品段階を設けることが推奨されるようなことがあります。この場合、
不良ユニットを処理する無駄が省けるものの、検品というそれ自体無
駄な作業が発生することになります。リーン シックス シグマ分析に
おいては、@RISK がこれらの失敗の原因を特定することができます
。また、@RISK は不確実性を品質指標 (ppm) と速度指標 (サイクル
タイム) の両方で扱うことができます。
リーン シックス シグマ分析での @RISK の使用には、以下のメリット
があります。
• プロジェクトの選択 ― RISKOptimizer を用いて最適なポートフ
ォリオを把握
• バリュー ストリーム マップの作成
• ばらつきの原因となっている CTQ の特定
• プロセスの最適化
• 無駄なプロセス ステップの特定と低減
• 在庫の最適化 ― RISKOptimizer を用いて費用を最小化
• 資源配分 ― RISKOptimizer を用いて効率を最大化
第 1 章 : @RISK とシックス シグマ手法の概要 13
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14 @RISK とシックス シグマ
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第 2 章 : シックス シグマでの
@RISK の使用
はじめに ..............................................................................................17
RiskSixSigma プロパティ関数 ..........................................................19
RiskSixSigma プロパティ関数の入力.................................................20
シックス シグマ統計関数 ...................................................................23
シックス シグマと [結果サマリー] ウィンドウ..................................35
グラフに表示されるシックス シグマ マーカー .................................37
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 15
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はじめに
シックス シグマ モデルでの使用を想定し、@RISK の標準シミュレー
ション機能には、次の 4 つの重要機能が新たに追加されています。
1) RiskSixSigma プロパティ関数 — シミュレーション出力の規
格値およびターゲット値が入力できます。
2) シックス シグマ統計関数 — シミュレーション結果のプロセ
ス能力指標 RiskCpk、RiskCpm や、その他のシックス シグ
マ統計をスプレッドシートのセルにダイレクトに返します。
3) [結果サマリー] ウィンドウに表示される新たな列 — シミュレ
ーション結果のシックス シグマ統計が表形式で表示されます
。
4) マーカー — シミュレーション結果のグラフ上に、規格値とタ
ーゲット値を示すマーカーが表示されます。
分布関数の入力、分布へのデータ フィット処理、シミュレーション
の実行および感度分析の実行といった @RISK の標準的な機能性は、
シックス シグマのモデルでも有効です。モデルで @RISK のシックス
シグマ機能を使用するにあたっては、@RISK for Excel ユーザー ガイ
ドまたはオンライン トレーニング資料を参照して、@RISK の標準的
な機能を使いこなせるようにしておくことをお勧めします。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 17
Page 24
18 はじめに
Page 25
RiskSixSigma プロパティ関数
@RISK シミュレーションでは、RiskOutput 関数によって、当該シミ
ュレーションの出力にあたるスプレッドシート上のセルが指定されま
す。可能な結果の分布は、選択された各出力セルに対して生成されま
す。これらの確率分布は、シミュレーションの各反復試行において、
あるセルに対して計算された値を収集することで作成されます。
ある出力のシックス シグマ統計を算出したい場合は、その
RiskOutput 関数の引数に RiskSixSigma プロパティ関数 を入力する
ようにします。このプロパティ関数には、当該出力のシックス シグ
マ演算の下方規格、上方規格、ターゲット値、長期シフト量、および
標準偏差の数値を指定します。これらの値は、[結果] ウィンドウおよ
び出力のグラフに表示される、シックス シグマ統計を計算するため
に用いられます。次にその例を示します。
RiskOutput(“Part Height”,,RiskSixSigma(.88,.95,.915,1.5,6))
この例では、「Part Height」という名の出力の下方規格値が .88、上
方規格値 が.95、ターゲット値が .915、長期シフト量が 1.5、標準偏差
の数値が 6 にそれぞれ指定されています。RiskSixSigma プロパティ
関数内では、セル参照を使用することも可能です。
これらの値は、[結果] ウィンドウに表示されるシックス シグマ統計
の演算に用いられるとともに、当該出力のグラフのマーカーとしても
用いられます。
ある出力に RiskSixSigma プロパティ関数が設定されていることを検
出すると、@RISK は自動的に、当該出力のシミュレーション結果に
対して用意されているすべてのシックス シグマ統計を [結果サマリー
] ウィンドウに表示します。また、この出力のシミュレーション結果
を示すグラフには、指定した下方規格値、上方規格値、およびターゲ
ット値を示すマーカーが追加されます。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 19
Page 26
RiskSixSigma プロパティ関数の入力
RiskSixSigma プロパティ関数は、RiskOutput 関数の引数としてセル
数式に直接入力できます。また、この関数をセル数式に直接入力する
際には、Excel の [ 関数の挿入] ウィザード をアシスタントとして利用
することもできます。
@RISK の [ 関数の挿入] コマンド を使用すれば、RiskSixSigma プロパ
ティ関数の備わった RiskOutput 関数が素早く挿入できます。単に、
@RISK の [関数の挿入] メニューから [ 出力] > [RiskOutput ( シックス
シグマ形式)] コマンドを選択することで、アクティブなセル数式に選
択した関数を追加できます。
20 RiskSixSigma プロパティ関数
Page 27
出力プロパティ
— [
シックス シグ
マ
]
タブ
@RISK には、RiskOutput 関数に RiskSixSigma プロパティ関数を入
力することができる、関数のプロパティ ウィンドウも用意されてい
ます。このウィンドウには、RiskSixSigma 関数の引数が入力できる [
シックス シグマ] タブがあります。RiskOutput 関数のプロパティ ウ
ィンドウは、[@RISK 出力の追加] ウィンドウにある [出力プロパティ
の表示] ボタンをクリックすることで表示できます。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 21
Page 28
シックス シグマの計算時に用いられる出力のデフォルト設定は、[シ
ックス シグマ] タブ上で行います。以下のプロパティが含まれていま
す。
• [この出力の能力指標を計算する] — 当該出力のレポートおよ
びグラフにおいて、能力指標を表示することを指定します。
これらの指標の算出には、入力した LSL 、USL 、およびター
ゲットの各値が用いられます。
• [LSL] 、[USL] 、および [ ターゲット ] — 出力の LSL (下方規格
限界)、USL (上方規格限界)、およびターゲット値を設定しま
す。
• [長期シフトの使用] および [ シフト量] — 長期能力指標の計算
時に用いられる、オプションのシフト量を指定します。
• [X の上界 / 下界] — X 軸の上界値および下界値を計算するた
めに用いる、平均値の左右の標準偏差数を指定します。
ここで指定したシックス シグマの設定は、RiskOutput 関数に
RiskSixSigma プロパティ関数が追加されることで処理されます。
RiskSixSigma プロパティ関数を含む出力のみについて、グラフとレ
ポートに、シックス シグマのマーカーと統計が表示されます。Excel
ワークシート上の @RISK シックス シグマ統計関数は、RiskSixSigma
プロパティ関数が含まれたあらゆる出力セルを参照することができま
す。
注意
: @RISK
ンの開始時に存在した
のすべてのグラフおよびレポートでは、シミュレーショ
RiskSixSigma
プロパティ関数の
LSL、USL
、
およびターゲット値が用いられます。出力の規格限界 (およびそれに
関連する
RiskSixSigma
プロパティ関数) を変更する場合は、シミュ
レーションを再実行して、更新されたグラフとレポートが表示される
ようにする必要があります。
22 RiskSixSigma プロパティ関数
Page 29
シックス シグマ統計関数
一連の @RISK 統計関数を利用することで、シミュレーション出力の
シックス シグマ統計を求めることができます。例えば、関数の
RiskCPK(A10) は、シミュレーション出力の CPK 値をセル A10 に返
します。これらの関数は、シミュレーションの実行中、リアルタイム
に更新されます。これらの関数は、シミュレーション結果の統計を算
出するという点で標準的な @RISK 統計関数 (RiskMean など) と似て
います。ただし、これらの関数は一般的にシックス シグマ モデルで
必要とされる統計を計算します。なお、これらの関数はモデル上の任
意のスプレッドシート セルおよび数式で使用することができます。
@RISK のシックス シグマ統計関数に関して注意しなければならない
点を、以下に示します。
• 統計関数の最初の引数にセル参照が入力され、このセルに
RiskSixSigma プロパティ関数の備わった RiskOutput 関数が含
まれている場合、@RISK は所定の統計を算出する際に、その出力
に設定された LSL 、USL 、ターゲット値、長期シフト量、標準偏
差数を使用します。
• セル参照が最初の引数として入力されている場合、そのセルは、
RiskOutput 関数で識別されるシミュレーション出力である必要
はありません
の統計を求めるために必要な設定を提供するために、オプション
の RiskSixSigma プロパティ関数を統計関数自体に付け加える必
要があります。
。ただし、出力ではないケースでは、@RISK が所定
• オプションの RiskSixSigma プロパティ関数を統計関数に直接入
力すると、@RISK は、参照先シミュレーション出力の
RiskSixSigma プロパティ関数に指定されたすべての統計関数を
オーバーライドします。これにより、1 つの出力において、異な
る LSL、USL、ターゲット、長期シフト量、および標準偏差数を
用いても、シックス シグマ統計を算出できるようになります。
• セル参照の代わりに名前が入力されている場合、@RISK は所定の
名前の出力が存在するかどうかを確認した後、RiskSixSigma プロ
パティ関数の設定を読み取ります。統計関数から参照される出力
にそれぞれ一意的な名前が付けられているかどうかは、ユーザー
自らが確認する必要があります。
• 引数のシミュレーション No. を指定すると、複数のシミュレーシ
ョンが実行される際に、どのシミュレーションの統計を求めるか
が選択できます。この引数はオプションの項目です。単一のシミ
ュレーションが実行される場合は、この引数を省略できます。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 23
Page 30
• オプションの RiskSixSigma プロパティ関数をシックス シグマ統
計関数に直接入力すると、実行される計算に応じてプロパティ関
数の異なる引数が用いられます。
• シミュレーション結果のカスタム レポートを作成するために用い
られるテンプレート シートに配置された統計関数は、シミュレー
ションが完了した時点でのみ更新されます。
シックス シグマ
統計関数の入力
@RISK の [ 関数の挿入] コマンドを利用すれば、シックス シグマ統計
関数も素早く入力できます。この操作は、単に、@RISK の [関数の挿
入] メニューの [ 統計関数] カテゴリにある [ シックス シグマ] コマン
ドを選択し、その後、必要な関数を選択するだけです。選択した関数
は、アクティブなセルの数式内に追加されます。
24 シックス シグマ統計関数
Page 31
RiskCp
RiskCpm
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskCP(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
び USL をオプションとして使用し、シミュレーション No. のセル
参照または出力名に対する工程能力を計算します。この関数は、
指定した出力の品質レベルと潜在的に生産可能なものを計算しま
す。
RiskCP(A10) は、出力セル A10 の工程能力を返します。
RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の RiskOutput 関数に
入力する必要があります。
RiskCP(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、LSL 100 お
よび USL 120 を使用して、出力セル A10 の工程能力を返しま
す。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskCpm(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
ゲットをオプションとして使用し、シミュレーション No. のセル
参照または出力名に対するタグチ工程能力を返します。この関数
は、根本的に Spk と同じですが、ターゲット値を使用します。こ
のターゲット値は規格限界内にある場合とない場合があります。
RiskCpm(A10) は、セル A10 のタグチ能力指数を返します。
RiskCpm(A10, ,RiskSixSigma(100, 120, 110, 0, 6)) は、 USL
120 、LSL 100 、およびターゲット 110 を使用して、セル A10 の
タグチ能力指数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
)) は、埋め込まれた Risk SixSigma プロパティ関数の LSL およ
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の USL 、LSL 、およびター
セル参照または出力名
セル参照または出力名
No.,
に対して
No.,
に対して
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 25
Page 32
RiskCpk
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskCpkLower
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskCpk(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL およ
び USL をオプションとして使用し、シミュレーション No. のセル
参照または出力名の工程能力指数を計算します。この関数は Cp
に類似していますが、不均衡な分布の効果に対する Cp の調整を
考慮します。数式では、Cpk = (USL- 平均値)/(3 x シグマ) または
(平均値 - LSL)/(3 x シグマ) のいずれか小さい方が採用されます。
RiskCpk(A10) は、出力セル A10 の工程能力指数を返します。
RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の RiskOutput 関数に
入力する必要があります。
RiskCpk(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、LSL 100
および USL 120 を使用して、出力セル A10 の工程能力指数を返
します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskCpkLower(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の LSL をオプションとして
使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力名の指定下
限に基づく片側能力指数を計算します。
RiskCpkLower(A10) は、出力セル A10 の指定下限に基づく片側
能力指数を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskCpkLower(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 LSL
100 を使用して、出力セル A10 の片側能力指数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
No.,
No.,
26 シックス シグマ統計関数
Page 33
RiskCpkUpper
RiskDPM
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskCpkUpper(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の USL をオプションとし
て使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力名の指定
上限に基づく片側能力指数を計算します。
RiskCpkUpper(A10) は、出力セル A10 の指定上限に基づく片側
能力指数を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskCpkUpper(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 LSL
100 を使用して、出力セル A10 の工程能力指数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskDPM(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL およ
び USL をオプションとして使用し、シミュレーション No. のセル
参照または出力名の不良率 PPM を計算します。
RiskDPM(A10) は、出力セル A10 の不良率 PPM を返します。
RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の RiskOutput 関数に
入力する必要があります。
RiskDPM(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、LSL 100
および USL 120 を使用して、出力セル A10 の不良率 PPM を返し
ます。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
セル参照または出力名
No.,
に対して
No.,
に対して
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 27
Page 34
RiskK
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskLowerXBound
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskK(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
び USL をオプションとして使用し、シミュレーション No. のセル
参照または出力名の工程センターの測度を計算します。
RiskK(A10) は、出力セル A10 の工程センターの測度を返しま
す。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の RiskOutput 関
数に入力する必要があります。
RiskK(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、LSL 100 お
よび USL 120 を使用して、出力セル A10 の工程センターの測度
を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskLowerXBound(
No., RiskSixSigma(LSL, USL,
の数
ョンとして使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力
名に対する平均値から指定された標準偏差の数に対する低い X 値
を返します。
RiskLowerXBound (A10) は、セル A10 の平均値から指定された
標準偏差の数の低い X 値を返します。
RiskLowerXBound(A10,, RiskSixSigma(100, 120, 110, 1.5, 6))
は、標準偏差 6 を使用して、セル A10 の平均値から標準偏差 -6
の低い X 値を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
No.,
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL およ
セル参照または出力名
に対して
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の標準偏差の数をオプシ
セル参照または出力名
に対して
28 シックス シグマ統計関数
Page 35
RiskPNC
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskPNCLower
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskPNC(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の LSL、USL、および長期
シフト量をオプションとして使用し、シミュレーション No. のセ
ル参照または出力名に対する指定下限および指定上限の外の欠陥
の全確率を計算します。
RiskPNC(A10) は、出力セル A10 の指定下限と指定上限の外の欠
陥の確率を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskPNC(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 LSL
100、 USL 120、および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セル
A10 の指定下限と指定上限の外にある欠陥の確率を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskPNCLower(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL、
USL、および長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレ
ーション No. のセル参照または出力名の指定下限の外にある欠陥
の確率を計算します。
RiskPNCLower (A10) は、出力セル A10 の指定下限の外にある欠
陥の確率を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskPNCLower(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、
LSL 100、 USL 120、および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セ
ル A10 の指定下限の外にある欠陥の確率を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
No.,
No.,
第 2 章 : シックス シグマでの @RISK の使用 29
Page 36
RiskPNCUpper
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskPPMLower
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskPNCUpper(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL、
USL、および長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレ
ーション No. のセル参照または出力名の指定上限の外にある欠陥
の確率を計算します。
RiskPNCUpper(A10) は、出力セル A10 の指定上限の外にある欠
陥の確率を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskPNCUpper(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、
LSL 100、 USL 120、および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セ
ル A10 の指定上限の外にある欠陥の確率を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskPPMLower(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL およ
び長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレーション
No. のセル参照または出力名の指定下限の下にある欠陥数を計算
します。
RiskPPMLower(A10) は、出力セル A10 の指定下限の下にある欠
陥の確率を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10
の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskPPMLower(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、
LSL 100 および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セル A10 の指
定下限の下にある欠陥数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
No.,
No.,
30 シックス シグマ統計関数
Page 37
RiskPPMUpper
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskSigmalLevel
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskPPMUpper(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL およ
び長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレーション
No. のセル参照または出力名の指定上限の上にある欠陥数を計算
します。
RiskPPMUpper(A10) は、出力セル A10 の指定上限の上にある欠
陥数を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の
RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskPPMUpper(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、
LSL 120 および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セル A10 の指
定上限の上にある欠陥数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskSigmaLevel(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の USL、
LSL、および長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレ
ーション No. のセル参照または出力名のプロセスシグマレベルを
計算します。(注意: この関数は、出力が正規に分布しており、規
格限界内で中央に集まっていることが前提です。)
RiskSigmaLevel(A10) は、出力セル A10 のプロセスシグマレベ
ルを返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セル A10 の
RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskSigmaLevel(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、
USL 120、 LSL 100、長期シフト量 1.5 を使用して、出力セル A10
のプロセスシグマレベルを返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
No.,
No.,
第 2 章 : シックス シグマでの @RISK の使用 31
Page 38
RiskUpperXBound
RiskYV
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskUpperXBound(
No., RiskSixSigma(LSL, USL,
の数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の標準偏差の数をオプシ
ョンとして使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力
名に対する平均値から指定された標準偏差の数に対する上位 X 値
を返します。
RiskUpperXBound (A10) は、セル A10 の平均値から標準偏差の
指定数の上位 X 値を返します。
RiskUpperXBound(A10,, RiskSixSigma(100, 120, 110, 1.5, 6))
は、標準偏差の数 6 を使用して、セル A10 の平均値から標準偏差
-6 の上位 X 値を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskYV(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
USL 、および長期シフト量をオプションとして使用し、シミュレ
ーション No. のセル参照または出力名に対する欠陥のないプロセ
スの割合または生産高を計算します。
RiskYV(A10) は、出力セル A10 に対する欠陥のないプロセスの割
合または生産高を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セ
ル A10 の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskYV(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 LSL 100 、
USL 120、および長期シフト量 1.5 を使用して、出力セル A10 に
対する欠陥のないプロセスの割合または生産高を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
)) は、埋め込まれた RiskSixSigma プロパティ関数の LSL 、
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
セル参照または出力名
に対して
No.,
に対して
32 シックス シグマ統計関数
Page 39
RiskZlower
RiskZMin
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskZlower(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の LSL をオプションとして
使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力名平均値か
ら、指定下限である標準偏差の数を計算します。
RiskZlower(A10) は、出力セル A10 の平均値から、指定下限であ
る標準偏差の数を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セ
ル A10 の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskZlower(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 LSL
100 を使用して、出力セル A10 の平均値から、指定下限である標
準偏差の数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
RiskZMin(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の USL および LSL をオプ
ションとして使用し、シミュレーション No. のセル参照または出
力名に対する Z-Lower および Z-Upper の最小値を計算します。
RiskZMin(A10) は、出力セル A10 に対する Z-Lower および Z-
Upper の最小値を返します。 RiskSixSigma プロパティ関数は、セ
ル A10 の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskZMin(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、USL 120
および LSL 100 を使用して、出力セル A10 に対する Z-Lower お
よび Z-Upper の最小値を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
セル参照または出力名
No.,
に対して
No.,
に対して
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 33
Page 40
RiskZUpper
説明
例
ガイドライン RiskSixSigma プロパティ関数は、
RiskZUpper(
RiskSixSigma(LSL, USL,
数
)) は、RiskSixSigma プロパティ関数の USL をオプションとし
て使用し、シミュレーション No. のセル参照または出力名平均値
から、指定上限である標準偏差の数を計算します。
RiskZUpper(A10) は、出力セル A10 の平均値から、指定上限であ
る標準偏差の数を返します。RiskSixSigma プロパティ関数は、セ
ル A10 の RiskOutput 関数に入力する必要があります。
RiskZUpper(A10, ,RiskSixSigma(100,120,110,1.5,6)) は、 USL
120 を使用して、出力セル A10 の平均値から、指定上限である標
準偏差の数を返します。
入力する必要があります。または RiskSixSigma プロパティ関数を
含める必要があります。
セル参照または出力名, シミュレーション
ターゲット, 長期シフト量, 標準偏差の
セル参照または出力名
に対して
No.,
34
Page 41
シックス シグマと [結果サマリー ] ウィンドウ
[@RISK 結果サマリー] ウィンドウには、モデルのシミュレーション
結果のサマリーが表示されます。シミュレーションされた出力セルお
よび入力分布のサムネイル グラフに加えて、これらの統計サマリー
も表示されます。
出力に RiskSixSigma プロパティ関数が含まれている場合、@RISK
はテーブル上に、当該出力のシミュレーション結果に関するシックス
シグマ統計を自動的に表示します。これらの列の表示・非表示は必要
に応じて切り替えることができます。
表示される統計
項目のカスタマ
イズ
[ 結果サマリー] ウィンドウの表示列は、結果に関して表示したい統計
を選択することでカスタマイズできます。ウィンドウ下部の [テーブ
ル列の選択] アイコンをクリックすると、[ テーブル列の選択] ダイア
ログが表示されます。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 35
Page 42
Excel
生成
レポートの
テーブルでパーセンタイル値を表示させたい場合は、実際のパーセン
タイル値を [ 指定したパーセンタイルでの値] の行に入力します。
[結果サマリー] ウィンドウの内容は、Excel に書き出すことができま
す。これにより、表示された統計とグラフを含むレポートを作成する
ことが可能です。この書き出し操作は、ウィンドウ下部の [ 編集とエ
クスポート] アイコンをクリックし、[Excel 上にレポートを表示] コ
マンドを選択することで実行できます。
36 シックス シグマと [結果サマリー] ウィンドウ
Page 43
グラフに表示されるシックス シグマ マーカー
出力に RiskSixSigma プロパティ関数が含まれている場合、@RISK
は自動的に、所定の LSL、USL およびターゲット値を示すマーカー
を、当該出力のシミュレーション結果を示すグラフ上に表示します。
これらのマーカーが不要な場合は、[ グラフのオプション] ダイアログ
の [ マーカー] タブの設定を利用して削除することができます。逆に
、他のマーカーを必要に応じて追加することも可能です。[グラフの
オプション] ダイアログは、グラフ上で右クリックするか、[グラフの
オプション ダイアログの表示] アイコン (グラフ ウィンドウの左下に
ある左から 2 番目のアイコン) をクリックすることで表示できます。
第 2 章: シックス シグマでの @RISK の使用 37
Page 44
38 グラフに表示されるシックス シグマ マーカー
Page 45
ケース スタディ
サンプル 1 — 実験計画法 (DoE): カタパルト....................................41
サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接...............................................47
サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用..............................53
サンプル 4 — DFSS: 電子回路の設計................................................59
サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロ
セス..................................................................................................61
サンプル 6 — DMAIC: RTY (Roll Through Yield) 分析....................71
サンプル 7 — 納入業者の選定 ...........................................................75
サンプル 8 — シックス シグマ DMAIC 不適合率 ..............................79
サンプル 9 — シックス シグマ RiskTheo 関数を用いた不適合率の判
定 .....................................................................................................83
ケース スタディ 39
Page 46
40
Page 47
サンプル 1 — 実験計画法 (DoE): カタパルト
サンプル モデル: Six Sigma DOE Catapult.xls
カタパルト (投石機) のモデルは、実験計画法の教材としてよく用い
られる例です。ここでは、モンテ カルロ シミュレーションと公差解
析についての説明も含まれています。
ここでは、カタパルトの製造を請け合ったこととします。顧客からの
要望は、このカタパルトが標準的なボールを 25 メートル +/- 1 メー
トルの誤差で飛ばせられるようにすることです。このカタパルトを製
造するにあたっては、次の設計仕様項目を考慮する必要があります。
• 発射角度
• ボールの質量
• 引張距離
• バネ定数
ケース スタディ 41
Page 48
分布の入力
設計仕様の各項目には、その項目が取り得るさまざま値を表現するた
めに、@RISK の確率分布を配置します。@RISK 確率分布は、@RISK
の [ 関数の挿入] コマンドまたは @RISK ツールバーの [ 分布の定義] ア
イコンを利用することで、数式に直接入力できます。例えば、引張距
離が取り得る値は、一様分布で表すことができます。
42 サンプル 1 — 実験計画法 (DoE): カタパルト
Page 49
RiskSixSigma
ロパティの入力
このモデルの出力となるのが投射距離であり、ここには投射距離の規
プ
格下限、規格上限、およびターゲット値が定義された RiskSixSigma
プロパティ関数が配置されています。入力側と同様に、@RISK の出
力も数式バーで直接入力できます。また、@RISK ツールバーの [出力
の追加] ボタンをクリックしてアクセスできる、ダイアログ ボックス
を介しても定義することができます。
これで、カタパルトの能力指標の Cpk、Cpk 上限、Cpk 下限、シグ
マ レベル、および DPM が求められます。このデータをもとに生産に
移る準備ができているかどうかが判断できます。
ケース スタディ 43
Page 50
結果のグラフ化
投射距離の結果の分布を確認すると、約 60% の試行において、投射
距離が規格外になってしまうことが読み取れます。
また、感度分析を検証すると、投射距離に影響を与える主要因が引張
距離、ボールの質量の順であることが読み取れます。
44 サンプル 1 — 実験計画法 (DoE): カタパルト
Page 51
このモデルは、タグチ メソッド (ロバスト パラメータ設計) の概念を
解説する上で有効な例です。タグチ メソッドにおいては、プロセス
のばらつきに影響を及ぼすレベルの変数と影響を及ぼさないレベルの
変数という、システムを定義する 2 種類の変数があるとされています
。タグチ設計の根底にあるのは、この前者のタイプの変数を、プロセ
スの総合的なばらつきを最小化するレベルに設定することにあります
。プロセスのばらつきに影響を及ぼさない変数は、プロセスを管理ま
たは (および) 調整するために用いられます。
今回のカタパルトのモデルの場合、さまざま設計因子 (引張距離およ
びボールの質量など) を調整しながら、出力である投射距離のばらつ
きを最小化するようにします。現在、投射距離の約 60% が 24~26 メ
ートルと定められた規格に収まらないことを考えると、まだまだ改善
の余地が残されていることが読み取れます。
ケース スタディ 45
Page 52
46
Page 53
サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接
サンプル モデル: Six Sigma DOE.xls
ここでは、円盤を円筒に溶接して作られる、鉄製の破裂カップ (下図
参照) のメーカーになったと仮定します。この製品には封具と安全装
置の両方の機能があるため、通常の使用時には一定の圧力に耐えられ
るものの、内部圧力が制限安全値を超えた際には接合部が分離するよ
うにしなければなりません。
円盤
Weld Pressure
溶 Weld
Pressure
Weld Time
円盤
円筒
固定ベース
このモデルでは溶接強度とプロセス因子および設計因子の関連付けを
行い、各因子のばらつきをモデル化した後、設計仕様に対する製品性
能の予測が行われます。複数の因子からの応答のモデル化は、実験計
画や重回帰分析を通じて統計学上有意な関数を導く出すことで、可能
になることがよくあります。
ケース スタディ 47
Page 54
ٛٛ
-
設計因
子
溶接圧
通電時間
トリガー ポイント
振幅
プロセス因子
周波数
円盤部材厚 円筒部材厚 ホーン長
実験計画
マトリクス
伝達関数
このサンプルでは、各因子の代わりに正規分布を利用して、@RISK
がデータのばらつきをシミュレーションします。@RISK 分布はセル
参照に対応しているため、製品やプロセスの開発サイクルを通じて手
軽に更新できる、表形式のモデルを容易に組み立てることが可能です
。
ここで不確実な要素は、以下のとおりです。
設計因子
• 円盤部材厚
• ホーン壁厚
応答
• ホーン長
プロセス因子
• 溶接圧
• 通電時間
• トリガー ポイント
• 振幅
• 周波数
48 サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接
Page 55
分布の追加
各要素の代わりに分布を追加するには、単に、@RISK ツールバーの [
分布の定義] アイコンをクリックし、そして正規分布 (Normal) を選
択した後、次の図にならって分布のパラメータまたはセル参照を指定
します。この際、必要であれば、Excel の数式バー上で各入力に対し
て直接、数式を入力することも可能です。例えば、「溶接圧」のセル
には次の体裁で数式を入力することができます。
=RiskNormal(D73,E73)
シックス シグマ
出力
ケース スタディ 49
このモデルの出力は、「設計 & プロセス性能」の欄にある溶接強度
(N) に定義されており、ここには規格下限 (LSL) 、規格上限 (USL) お
よびターゲット値が指定された RiskSixSigma プロパティ関数が配置
されています。出力の関数は、入力分布を定義するのと同様に、出力
セルに直接記入することもできれば、[出力の追加] ダイアログを使用
して記入することもできます。ここで入力する数式は次のとおりです
。
=RiskOutput("
学的な演算
溶接強度
]
(N)",,,RiskSixSigma(D82,E82,105,0,1))+ [
数
Page 56
次のような [ 出力の追加] ダイアログが表示されます。
このダイアログのプロパティ ボタン (fx アイコンのボタン) をクリッ
クすると、[シックス シグマ] タブが備わった、[ 出力プロパティ] ダイ
アログが表示されます。このダイアログでは、指定した出力の LSL、
USL、ターゲット値やその他のシックス シグマ プロパティが入力で
きます。これらはシックス シグマ統計を求める際に用いられます。
50 サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接
Page 57
シミュレーショ
ンの結果
このシミュレーションを実行すると、Cpk 上限、Cpk 下限、Cpk、お
よび不良品 PPM (DPM) に配置された @RISK シックス シグマ関数を
用いてシックス シグマ統計が求められます。なお、ここでは標準的
な @RISK 統計関数 (RiskMean など) も用いられています。
@RISK の出力分布には、さまざまな設計因子とプロセス因子のばら
つきを加味したパフォーマンス予測が示されるとともに、LSL 、USL
、およびターゲットを示すマーカーが表示されます。出力統計には、
レポート機能を利用するか @RISK 関数を介して、手軽にアクセスで
きます。
ケース スタディ 51
Page 58
@RISK 感度分析を検証すると、溶接強度のばらつきの主要因となっ
ているパラメータが通電時間と振幅であることが確認できます。
この問題に関する次のステップとしては、以下の 2 項目の検討が挙げ
られます。通電時間と振幅のばらつきをより厳密にコントロールし、
ばらつきを減らす方法を検討してみる。あるいは、RISKOptimizer を
利用して生産能力の最大化またはスクラップ処理費の削減が可能にな
るような、最適なプロセスおよび設計ターゲットを求めてみる。
52 サンプル 2 — 実験計画法 (DoE): 溶接
Page 59
サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用
サンプル モデル: Six Sigma DOE Opt.xls
このモデルは、実験的な設計において RISKOptimizer を使用する方
法を示すためのものです。RISKOptimizer はモンテ カルロ シミュレ
ーションと遺伝的アルゴリズムに基づく最適化処理の組み合わせを可
能にします。この 2 つのテクニックが利用できる RISKOptimizer は
、不確実性の伴う高度な最適化問題の解を求めることができる独特の
存在です。
RISKOptimizer を利用すれば、モデル内のあらゆる出力を最大化、最
小化したり、特定のターゲット値に近づけたりすることができます。
RISKOptimizer は、所定の目標を達成するために、ユーザーが制御可
能として指定した入力群のさまざまな組み合わせを試行します。この
各組み合わせのことを「解」と呼び、試行された一連の解の集合のこ
とを「母集団」と呼びます。また「突然変異」とは、直前の試行とは
無関係な、新たな解がランダムに試行されるプロセスのことを指しま
す。最適化にあたっては、どのような制約のもとに処理を行うかを、
RISKOptimizer に指示することもできます。
モデル内にある不確実で制御不可能な因子に対しては、@RISK の確
率分布関数を定義します。そして入力群の各試行組み合わせに対して
は、RISKOptimizer がモンテ カルロ シミュレーションも実行し、こ
れらの @RISK 関数のサンプリングを行うとともに、各試行の出力を
記録します。RISKOptimizer は最適な解を求めるために、数千回にも
およぶ試行を実行します。不確実性を考慮できる RISKOptimizer は
、一般的な最適化プログラムよりはるかに正確な解を求めることがで
きます。
このサンプルでは、直前のサンプル同様に、円盤を円筒に溶接して作
られる金属製の破裂カップを取り上げることにします。この製品には
封具と安全装置の両方の機能があるため、通常の使用時には一定の圧
力に耐えられるものの、内部圧力が制限安全値を超えた際には接合部
が分離するようにしなければなりません。
このモデルでは溶接強度とプロセス因子および設計因子の関連付けが
行われ、各因子のばらつきがモデル化されるとともに製品性能の予測
が行われます。ここでは、モデル内に 1 年あたりの不良品費用と記さ
れたスクラップ費用を最小化する、最適なプロセス設定および設計公
称値の組み合わせを求めるために、RISKOptimizer が用いられていま
す。これは生産高の最大化と同じことになります。
ケース スタディ 53
Page 60
RISKOptimizer が調整するプロセス因子および設計因子は以下のとお
りです。
設計因子
• 円盤部材厚
• ホーン壁厚
• ホーン長
プロセス因子
• 溶接圧
• 通電時間
• トリガー ポイント
• 振幅
• 周波数
これらはすべて、出力の「1 年あたりの不良品費用」を最小化するこ
とを目的に調整されます。
54 サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用
Page 61
RISKOptimizer
のツールバー
Excel 2000-2003 には、次の体裁の RISKOptimizer ツールバーが追加
されます。
Excel 2007 には、次の体裁の RISKOptimizer ツールバーが表示され
ます。
最適化モデル
[ モデルの定義] アイコンをクリックすると、調整可能なセルや、使用
する出力および制限を定義するための次のダイアログが表示されます
。ここでは前述の入力と出力の定義の他に、トリガー ポイントが必
ず通電時間以下ではならないという制限を定義することにします。
ケース スタディ 55
Page 62
最適化設定
[ 最適化設定] アイコンをクリックすると、最適化処理とシミュレーシ
ョンのさまざまな実行詳細を調整・指定することが可能な、次のダイ
アログが表示されます。
最適化の実行
56 サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用
[最適化の開始] をクリックすると、処理の進み具合を示すサマリー
データが含まれた、[RISKOptimizer 進行状況] ウィンドウが表示さ
れます。
Page 63
虫メガネのアイコンのボタンをクリックすると、実行中の最適化処理
およびシミュレーションについての詳しい情報が含まれた、
[RISKOptimizer ウオッチャー] ダイアログが表示されます。次の図で
は、シミュレーションの実行状況と、それまでに見つかった最適な値
が示されていることが確認できます。
[ サマリー] タブには、求められたベスト、オリジナル、および最後の
各値と、交差率や突然変異率といった最適化時のパラメータが表示さ
れます。
ケース スタディ 57
Page 64
[ 相違] タブには、演算の対象となったさまざまなセルと、それらの可
能な解が視覚的に表示されます。
このシミュレーションおよび最適化処理を実行すると、
RISKOptimizer によって効率よく、 1 年あたりの不良品費用を
728,000 円以下に低減するための解が求められます。
RISKOptimizer を使用することで、品質改善やコスト ダウン対策に
必要な時間と手間が省けます。この問題に関する次のステップは、実
験を通じてこのモデルと最適化された解の有効性を確認することです
。
58 サンプル 3 — 実験計画法 (DoE) と最適化の使用
Page 65
サンプル 4 — DFSS: 電子回路の設計
サンプル モデル: Six Sigma Electrical Design.xls
ここに示す簡単な直流電子回路は、従属電圧源と独立電圧源の 2 つの
電源と 2 つの抵抗器によって構成されています。設計者の指定による
と、この独立電圧源の動作電力レンジは 5,550 W +/- 300 W とされて
います。仮に、この独立電圧源に仕様範囲外の電力が通電された場合
は、回路に支障が及ぶことになります。設計パフォーマンス結果には
、制限値の上端と下端のいずれを超えた場合でも、ある割合の回路に
故障が発生し、設計品が十分な能力を発揮できないことが明記されて
います。仕様の上限および下限で発生することが予測される不適合ユ
ニットは、PNC 値で表されます。
この基本的なモデル ロジックは以下のとおりです。
入力
VI
VD
R1
R2
電源 (単独 )
Vs
+
出力
伝達関数
(V=IR, P=VI)
PI
抵抗器
電源 (従属)
R1
R2
XiVs = i
ケース スタディ 59
Page 66
このモデルは既知の情報と、モデルに関する以下の前提条件をもとに
各構成要素の標準偏差を算出します。
1) 構成要素の値の平均は、許容誤差範囲の中心に相当する。
2) 構成要素の値は正規分布で分布される。 @RISK は既存のデー
タ セットに確率分布をフィットするために使用できるだけで
なく、必要に応じて他の種類の確率分布をモデル化するため
にも使用できる点に留意してください。
出力セル「PowerDep 」の RiskSixSigma プロパティ関数には、シッ
クス シグマ結果の演算に用いられる上限、下限、およびターゲット
が定義されています。@RISK のシックス シグマ関数は、Cpk 下限、
Cpk 上限、Cpk、Cp、DPM、PNC 上限、および PNC 下限を求める
ために用いられています。
感度分析
@RISK 感度分析では、出力の変化の主要因にあたる入力変数が特定
されます。感度分析の結果からは、2 つの電圧源が電力消費量の増減
の主要因であることが読み取れます。この情報が明らかにされたこと
で、エンジニアリング チームは、抵抗器ではなく電圧源の改良に注
目すれば良いことが分かります。
このモデルは、構成要素や許容誤差を変化させたテストや、能力およ
び性能の比較にも用いることができ、能力の最大化とコスト削減を実
現するための最適なソリューションの選択を可能にします。
60 サンプル 4 — DFSS: 電子回路の設計
Page 67
サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分
析 — 見積作成プロセス
サンプル モデル: Six Sigma Quotation Process.xls
リーンとシックス シグマは、いずれも継続的な改善に基づく手法で
あり、これから検討しようとするプロセスの現況を把握することが重
要な要件とされています。当初、この作業はリーンの場合はバリュー
ストリーム マップの作成段階、そして DMAIC シックス シグマ プロ
セスの場合は「定義」と「測定」の段階で行われます。大半の実務者
は、このプロセスを単一または複数のセッションに組み込み、大まか
なレビューを経た後、解決策を見いだすための段階に作業を進めてい
ます。ここでは、プロセスのモデル化に相当の時間を割き、使用する
データおよび前提条件が正しいことを確認することに大きな意義があ
ります。この作業は、次に示すいずれかの条件にあてはまる場合に、
特に重要になります。
• 検討対象のプロセスが企業の成功にとって不可欠なものである (
ミッション クリティカル)
• プロセスの改善が必要なことに関して、相当の否定・反論がある
• 改善にかかる費用が相当な額におよぶ
• 継続的な改善努力の結果・効果が、後日、厳しく検証・追及され
る可能性がある
• 検討中のプロセスがホーソーン効果の対象である (さらなる研究
を重ねることで、より優れた結果が得られる)
シミュレーションでは、現在状況の初期分析の正確さを証明すること
もできれば、分析チームが遭遇する、実際の状況を示すこともできま
す。各分野においては、実存するはずだと考えられるプロセス、実情
をもとに記録されたプロセス、および日々、実際に行われているプロ
セスという、3 種 3 様のプロセスがあります。@RISK シミュレーショ
ンを入念に作り込めば、実際のプロセスが記録できるとともに、後か
ら発生する継続的な改善サイクルの影響を、的確にモデル化すること
ができます。この際、モデルは簡単に組み立てることができます。
ケース スタディ 61
Page 68
モデルの開発と
データの収集
このサンプルは、実在するある企業の社内見積作成工程プロセス フ
ローを示したものです。プロセスを視覚的に表現するツールは数多く
存在しますが、ここではスイムレーン図を使用することにします。
今回の見積作成プロセスは、全体で 36 におよぶ個々のステップから
構成され、10 の個人または部署が途中で関わっています。概算デー
タを検証したところ、このシステムでは重要案件に限り見積作成所要
期間を 1 週間以内に短縮できるものの、通常は見積が完成するまでに
最高 4 週間が必要とされていました。見積作成にかかる時間が長いこ
とにより、この企業では利ざやの大きい、緊急注文を逃さざるを得ず
にいませんでした。経営陣は急ぎの見積が通常の約 1/4 で作成でき
ることに注目し、プロセス自体ではなく、人事的な要因が問題の根源
にあるのではないかと考えていました。一方の分析チームは、この会
社のプロセス自体が問題であることを証明するために、なんらかの手
立てを必要としていました。
スイムレーン図を作成した分析チームは、まず、顧客の見積依頼を受
け取ってから、エンジニアリング部門に見積が届くまでのプロセス所
要時間が、どの程度であるかを問うことにしました。この部分がプロ
セスの最初の部分にあたります。この部分のデータは比較的に簡単に
収集することができ、しかもここで明らかになる事柄は、プロセス全
体に対して適用することも可能でした。
62 サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロセス
Page 69
見積作成プロセスのこの部分は、次の 4 つのステップから構成されて
います。まず、データの収集と入力 (ステップ A)。そして、カスタマ
ー サービスのチェック待ち (ステップ B)。ここで、修正作業、および
フォームへの追加データの入力と追跡番号の割り当てが行われます (
ステップ C)。そして最後に、エンジニアリング部署で見積作業を行
うための、パッケージの処理待ち (ステップ D)。
分析チームでは、各ステップの通過時間を簡単なタイム シートに記
録し、各プロセス ステップの所要時間を計測することにしました。
そして、このデータをもとに、この部分のプロセスにある 4 つのステ
ップに関して初期分析を行うことにしました。
ケース スタディ 63
Page 70
分布の作成と出
力の定義
ここで扱うシンプルな分布データの場合、データの分布は単一の曲線
に沿うような形で存在します。一方の複雑な分布の場合は、いくつか
の個々の分布から構成され、定義がより難しくなるのが一般的です。
今回、分析チームが収集したデータは、この両方のタイプに属するも
のでした。
@RISK では、ツールバーの [ 分布のフィット] ボタン利用して、デー
タの分布パターンを読み取ることができます。あらかじめこの処理で
フィットした分布は、スプレッドシートに分布関数として入力できま
す。ユーザーは、Excel 上のデータを選んだ後、[分布のフィット] ボ
タンを選択し、画面の指示に従うだけで、後は @RISK が当該データ
を検証し、一連の分布関数との適合度をチェックします。
次の図は、分析チームがステップ C (チェック作業) で収集したデー
タを @RISK でフィットした結果を示すものです。結果として提示さ
れた分布は、[セルへの書き込み] ボタンを利用して、見出しの「C チェック作業」直下にあるスプレッドシート セルに直接書き込むよ
うにします。(今回、分析チームはランキングが最も高いワイブル
(Weibull) 分布ではなく、それよりランキングがやや低い、正規
(Normal) 分布を選択しました。これは、今回のような小さなデータ
セットの場合、2 つの曲線間の差が許容範囲内にあるからです。)
分析チームは、4 つのステップすべてに対して、分布を割り当てる作
業を進めました。そして、最後にステップ A ~D の計である「合計時
間」のセルを @RISK 出力として設定し、シミュレーションを実行し
ました。
64 サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロセス
Page 71
シミュレーションの結果、有用なデータが明らかになりました。見積
作成に必要な合計時間の平均値は約 1700 分。つまり、軽く 1 日以上
にあたります。また、所要時間のデータには 350 分 (約 6 時間) から
、楽に 2 日以上の間で、ばらつきがあることが判明しました。
この所要時間の間に発生する唯一の付加価値ステップといえば、チェ
ック作業の段階のみです。このステップの所要時間は平均で 35 分、
そして、ばらつきは 6 分から 64 分の間であることが判明しました。
このデータに基づいて関連部署の作業を検証した結果、経営陣は驚き
ながらも、この結論が本当であることに納得しました。
シミュレーショ
ン結果の統計
@RISK によって、分析チームは、出力セルに関する基礎的な統計を
生成することができました。例えば、分析チームは、スプレッドシー
トのテーブルに出力セル「合計時間」の平均値、最大値、最小値、お
よび標準偏差を追加したいと考えていました。この場合は、@RISK
の [ 関数の挿入] メニューをクリックし、「統計関数」のセクション
にある [ シミュレーション結果] を選択します。ここでは表示される
一連の関数の中から、RiskMean を選択することができます。引数と
しては、出力セルの「合計時間」を選択するようにします。これで、
シミュレーションが実行される度にこのセルが更新され、「合計時間
」の平均値が表示されるようになります。
最大値、最小値、標準偏差についても、同様の作業が行われています
。
ケース スタディ 65
Page 72
シックス シグマ
関数の入力
次に、分析チームは @RISK のシックス シグマ関数を利用して、出力
セルの Cpk を分析したいと考えました。そこで、出力セルの「合計
時間」に、次のような条件で RiskSixSigma 関数を入力しています。
• セル参照を用いて出力セルの名前を取得するための見出しセ
ルを指定
• セル参照を用いて予期される結果の LSL を指定
• セル参照を用いて予期される結果の USL を指定
• セル参照を用いて予期される結果のターゲット値を指定
これらの RiskSixSigma 関数は、[ 出力プロパティ] ダイアログ (@RISK
の [出力の追加 / 編集] ダイアログにある「fx 」の関数プロパティ ア
イコンをクリックしてアクセス) を用いて簡単に設定できます。
66 サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロセス
Page 73
出力の設定が完了した後、分析チームはシミュレーション時に、
@RISK シックス シグマ関数で Cp、CpkUpper、CpkLower、および
Cpk を計算したいと考えていました。これらの関数は、 @RISK の [関
数の挿入] メニューの [統計関数] のセクションから所定の シックス シ
グマ関数 (RiskCp、RiskCpkUpper など) を選択するか、数式バーに
必要なシックス シグマ関数を直接打ち込むことで挿入できます。こ
れらの値は、シミュレーションが実行される度に再計算されます。
ケース スタディ 67
Page 74
シミュレーショ
ン出力のグラフ
化
LSL 、USL およびターゲット値を示すマーカーが備わった @RISK の
結果グラフを確認した経営陣は、35 分ほどの作業のために平均でも 1
日以上がかかっていることに驚きを覚えました。出力である合計時間
のシミュレーション結果と、「ステップ C - チェック作業」の入力分
布でサンプリングされた値の集合を、以下の図に示します。
68 サンプル 5 — リーン シックス シグマ: 現況の分析 — 見積作成プロセス
Page 75
分析チームはシミュレーションの結果をもとに、実際のフローと、見
積が急ぎとして扱われない場合に何が起こるかの詳細を文書化するこ
とができました。この結果、経営陣はプロセス全体を監視・改善する
ことによって、改良の余地があることに納得しました。経営陣がプロ
ジェクトの初期段階で関与することは、プロジェクトの長期的な成功
に欠かせない要素であったといえるでしょう。
この初歩的なモデルの後、分析チームはすべてのプロセスを網羅した
完全なモデルを構築しました。この完全なモデルを構築することで、
分析チームはプロジェクトのさまざまな段階の改善機会がモデル化で
きるようになっているとともに、導入した改善策がプラスの影響を与
えているかどうかを検証できるようになっています。今回、@RISK
で当初のシミュレーションを作成・実行し、結果を得るまでにかかっ
た時間は、Excel に従来のデータを打ち込んでから、わずか 1 時間に
も達しませんでした。
ケース スタディ 69
Page 76
70
Page 77
サンプル 6 — DMAIC: RTY (Roll Through Yield)
分析
サンプル モデル: Six Sigma DMAIC RTY.xls
DMAIC ( 定義 <Define>、測定 <Measure> 、分析 <Analyze> 、改善
<Improve>、管理 <Control>) は、既存の製品およびプロセスを改善
するために用いられる概念です。ここでは、安価な銀に金メッキを施
した模造ジュエリーの製造者になったことを想定してください。原材
料や部品は中国から輸入することにします。部品には常に少量の欠陥
品が含まれていますが、その数量と損害額は明らかではありません。
そこで、元からの欠陥部品の数と、製造プロセスのさまざまな段階で
欠陥品となる部品数のデータを収集したとします。この結果、プロセ
スの各段階では 99% 以上もの部品が良好であるため、表面的には欠
陥部品の存在が大した問題には見えません。しかし、欠陥部品の複合
的な影響により、最終製品の 15 ~20% もが損失されていたとします
。これは、製造数 100 万あたり 200,000 個の欠陥ユニットが発生して
いることに相当します。ユニットあたりの原材料価格が $.50 であっ
たとしたら、労働費、機械稼働時間およびその他の経費を考慮しなく
ても、損失額は $100,000 に達します。
ケース スタディ 71
Page 78
ここでは、生産される欠陥ユニットの数量を減らす必要があります。
しかし、その過程は長く複雑で、どの段階から開始すべきかさえ明ら
かではありません。このような場合、@RISK を使用すれば多種多様
な結果をシミュレーションし、最大の問題となっている製造段階を特
定することができます。また、個々の段階およびプロセス全体の主要
なプロセス能力指標を求めることもでき、品質の改善と損失の低減に
も役立てることが可能です。つまり、ここでは DMAIC 手法の「測定
」と「分析」のフェーズで @RISK を使用することになります。
@RISK は、(能力指標による) プロセスの現状の測定と、(感度分析に
よる) それらの改善策の分析を行うために用いられます。
分布のフィッテ
ィング
ここでは、製造プロセスから収集されたデータをもとに、@RISK の
分布フィッティング機能を利用して、プロセスの各段階 (開封/ 検品、
切断、清掃、および電気メッキ処理) で生じる欠陥部品の数量を表す
分布関数を定義しています。次の図に示すのは、電気メッキ フェー
ズのデータに分布をフィットした結果です。ワイブル分布が最もフィ
ットする分布として示されています。
72 サンプル 6 — DMAIC: RTY (Roll Through Yield) 分析
Page 79
シミュレーショ
ンの結果
こうしてフィットされた分布は、すべてモデルに直接追加されていま
す。次の図は、電気メッキ フェーズの分布を示したものです。
各段階およびプロセス全体で生じる 100 万ユニットあたりの不良品率
(DPPM) は、USL 、LSL 、およびターゲット値が指定されたシックス
シグマ仕様とあわせて、@RISK 出力として定義されています。この
シミュレーションを実行すると、各プロセスおよびプロセス全体に関
するさまざまなシックス シグマ指標が算出されます。
ケース スタディ 73
Page 80
次に示すのは、DPPM の結果データの分布です。
感度分析とトルネード グラフの結果を検証すると、他にも FTY (First
Time Yield: 初回検査時の歩留まり) の値が一層低い段階 (「清掃」の
方が欠陥品数が少ない) が存在はするものの、「切断」の段階こそが
、欠陥品が製造される最大の要因になっていることが読み取れます。
これは、「切断」の FTY 値の方が他の段階より高いとはいえ、「切
断」プロセス自体がより一貫性に欠け、他のプロセスよりもばらつき
を起こしやすいためです。
74 サンプル 6 — DMAIC: RTY (Roll Through Yield) 分析
Page 81
サンプル 7 — 納入業者の選定
サンプル モデル: Six Sigma Vendor Selection.xls
ここでは新製品のローンチを想定することにします。この企業では、
製品ローンチの実行段階において、毎月の売上予測を 25,000 ユニッ
トと想定しています。この製品の要となる部品には精密機械加工が必
要とされるため、一部の業務を外部委託しなければなりません。つま
り、この部品を製品で使用するには、部品に対する詳細な要件が満た
される必要があります。具体的には、許容誤差がわずか +/- 1 mm 、
かつ部品全長 66.6 mm の仕様が定められています。
現在のところ、この主要部品を納入できる企業は 3 社あります。交渉
の結果、納入業者ごとに異なる部品単価が提示されています。ただし
、納入部品の品質が 3 社同じというわけではなく、一部の部品は仕様
通りの長さでは納品されません。納入業者のうち 2 社については、部
品納品時に仕様の誤差範囲内であることを確認するために全品検査が
必要となります。これにより、労働費およびスクラップの廃棄費がプ
ロセスに追加されます。第 3 の納入業者は認定を受けており、納入部
品が 100% 仕様通りであることを保証しています。つまり、検品やス
クラップの廃棄といった処理の必要がありません。ただし、この納入
業者の単価は 3 社のうち、最も高い水準にあります。
不測の事態に備えて、常に納入業者を複数確保しておくことが求めら
れます。ただし、部品の加工業務を委託する上でより能率的な計画が
立てられるよう、どの納入業者が実質的に最も高い単位原価を必要と
するかを把握する必要があります。
ケース スタディ 75
Page 82
部品長のモデル
化
各納入業者の部品長は、@RISK 分布関数によって表されます。また
、これらのセルには @RISK 出力が設定されるとともに、各納入業者
の Cpm を算出し、加工仕様の目印が付いた部品長の分布グラフを生
成するために RiskSixSigma 関数が定義されています。この
RiskSixSigma 関数には、USL、LSL、ターゲット値の 66.6 mm、およ
び許容誤差として +/- 1 mm が指定されています。
部品仕様 (mm)
LSL ターゲット USL
66.5 66.6 66.7
例えば、納入業者 1 が納品する部品の長さは Pert 分布で定義され、
ここには以下の RiskSixSigma プロパティが含まれています。
= RiskOutput(,,,RiskSixSigma(B30,D30,C30,0,6))+RiskPert(66.4,66.6,66.7)
76 サンプル 7 — 納入業者の選定
Page 83
シミュレーショ
ンの結果
このシミュレーションを実行すると、実質的な単位原価が最も低いの
は納入業者 1 であることが確認できます。また、ここでは、
RiskMean 関数を用いた各納入業者のシミュレーション単価の平均も
確認することができます。各納入業者の部品長の Cpm も算出されて
います。
適合部品の実
納入業者 1 $6.13 0.553 $6.16
質的な単価
Cpm 長さ 実質的な単価の平均
納入業者 2
納入業者 3 ( 認定
済)
以下のグラフには納入業者 1 の品質のばらつきが示されています。
$6.75 0.472 $7.03
$6.40 0.686 $6.40
これで能率的な外注計画を立てる上で必要な、費用および品質の情報
が揃うことになります。次のステップとしては、カイゼン活動を通じ
て社内の検品時間を削減するなど、さらなる費用削減の方法を検討し
てみることが挙げられます。
ケース スタディ 77
Page 84
78
Page 85
サンプル 8 — シックス シグマ DMAIC 不適合率
サンプル モデル: Six Sigma DMAIC Failure.xls
ここに示すのは、品質管理および品質計画で用いられる不適合率のモ
デルです。ここでは、製造業者になったと仮定し、不良品となる製品
の % 割合の算出を求められていることにします。ここでは現状の品
質測定と支障および欠陥の原因分析が求められています。これは
DMAIC (定義 <Define>、測定 <Measure>、分析 <Analyze>、改善
<Improve>、管理 <Control>) でいうところの「測定」および「分析
」のフェーズにあたります。
製品の適合/不適合は、当該製品の 1 つまたは複数の構成要素が所定
の許容誤差水準内にあるかどうかで判定されます。各構成要素は、完
成時のある属性 (製品の幅など) が、規定された許容誤差内に収まっ
ていることをもって条件を満たしていると判断されます。
ケース スタディ 79
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構成要素の幅の
モデル化
完成時の各構成要素の属性 (製品の幅など) は、「サンプル」列に正
規分布でモデル化されています。
サンプル
10.00
5.00
8.00
12.00
6.00
また、これらのセルには @RISK 出力が追加されているとともに、各
構成要素の LSL 、 USL 、およびターゲット値が指定された
RiskSixSigma プロパティ関数も含まれています。構成要素 1 の数式
は次のようになります。
=RiskOutput(,,,RiskSixSigma(F26,G26,C26,0,0))+RiskNormal(C26,D26)
これにより、構成要素の品質をグラフ化して表示できるだけでなく、
これらのシックス シグマ統計が算出できるようになります。
80 サンプル 8 — シックス シグマ DMAIC 不適合率
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RiskMean
関数
を用いた不適合
率の算出
構成要素および全体の不適合率の計算には、@RISK 統計関数の
RiskMean が用いられています。したがって、シミュレーションを実
行するまでは有効な値は表示されません。また、シミュレーションを
実行すると、構成要素およびその総合的なシックス シグマ統計の Z
値と DPM 値も確認することができます。
Z 最小 不適合頻度
2.999060375
2.99523275
2.990852805
3.492267357
3.002125568
2.945880756
次に示すのは、USL 、LSL 、ターゲット値の各マーカーが備わった、
構成要素 1 のサンプリング結果です。
1/334 の確率で不適合
1/334 の確率で不適合
1/334 の確率で不適合
1/1000 の確率で不適
合
1/1000 の確率で不適
合
1/91 の確率で不適合
DPM
3000
3000
3000
1000
1000
11000
ケース スタディ 81
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82
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サンプル 9 — シックス シグマ RiskTheo 関数を
用いた不適合率の判定
サンプル モデル: Six Sigma DMAIC Failure RiskTheo.xls
ここに示すのは、品質管理および品質計画で用いられる DMAIC 不適
合率モデルの内容をさらに拡充したものです。このサンプルには、実
際のシミュレーションを実行することなく不適合率を求められるよう
、RiskTheo 関数 (ここでは RiskTheoXtoP) が用いられています。
RiskTheo 関数は、シミュレーションの実行から得たデータの統計を
返すのではなく、入力分布または数式の理論的な統計を返します。
ここでは、製造業者になったと仮定し、不良品となる製品の % 割合
の算出を求められていることにします。ここでは現状の品質測定と支
障および欠陥の原因分析が求められています。これは DMAIC (定義
<Define>、測定 <Measure>、分析 <Analyze>、改善 <Improve>、管
理 <Control>) でいうところの「測定」および「分析」のフェーズに
あたります。
製品の適合/不適合は、当該製品の 1 つまたは複数の構成要素が所定
の許容誤差水準内にあるかどうかで判定されます。各構成要素は、完
成時のある属性 (製品の幅など) が、規定された許容誤差内に収まっ
ていることをもって条件を満たしていると判断されます。
ケース スタディ 83
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構成要素の幅の
モデル化
完成時の各構成要素の属性 (製品の幅など) は、「サンプル」列に正
規分布でモデル化されています。
サンプル
10.00
5.00
8.00
12.00
6.00
また、これらのセルには @RISK 出力が追加されているとともに、各
構成要素の LSL 、 USL 、およびターゲット値が指定された
RiskSixSigma プロパティ関数も含まれています。構成要素 1 の数式
は次のようになります。
=RiskOutput(,,,RiskSixSigma(F26,G26,C26,0,0))+RiskNormal(C26,D26)
これにより、仮にシミュレーションを実行した場合は、構成要素の品
質をグラフ化して表示できるだけでなく、これらのシックス シグマ
統計を算出することができます。
84 サンプル 9 — シックス シグマ RiskTheo 関数を用いた不適合率の判定
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RiskTheoXtoP
関数を用いた不
適合率の算出
構成要素および全体の不適合率の計算には、「サンプル」列の正規分
布を参照する RiskTheoXtoP が用いられます。また、このシミュレ
ーションを実行すると、RiskMean 関数を用いたケースの不適合率が
算出されます。これにより、シミュレーションからの不適合率と
RiskTheo からの不適合率の比較が可能になります。
シミュレーシ
ョンから得た
不適合率 (%)
0.30% 0.270%
0.20% 0.158%
0.20% 0.138%
0.00% 0.047%
0.10% 0.135%
1%
また、シミュレーションを実行すると、構成要素およびその総合的な
シックス シグマ統計の Z 値と DPM 値も確認することができます。
シミュレーション
からの Z 最小値
3.0019569 3000
3.00420087 2000
RiskTheo から得た
不適合率 (%)
シミュレーシ
ョンからの
DPM
2.984884973 3000
3.503591776 0
2.995848512 1000
3.146403741 9000
ケース スタディ 85
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