真空管の交換とバイアス調整
真空管アンプではバイアス(BIAS)調整と真空管の交換は避けては通れません。この2つは相互に関連しているため、ひとつの項目と
して扱います。
真空管の寿命はどのくらい?真空管の寿命はどのくらい?真空管の寿命を正確に予測することはできません。場合によっては製造後のかなり早い段階で使えな
くなる場合もあれば、30年以上使用できる場合もあります。Stingrayの場合、使用状況にもよりますが、平均して4年から5年の寿命と
考えてよいでしょう。これはすべての真空管にあてはまることですが、使用年数にしたがって品質が劣化して行きます。これはカソー
ドのエミッションが徐々に低下してゆくためで、自然の過程といえるものです。
真空管の交換時期をどうやって知る?真空管の交換時期をどうやって知る?出力管のEL-84については適正なバイアス値になっていることをチェックする必要がありま
す(15ページ参照)が、他と著しく異なるバイアス値になっている真空管ついては、再度バイアスを調整した後、注意深く観察し、そ
れでもバイアス値の変化が大きい真空管については交換の時期が来たといえます。出力管以外の入力段の真空管などが寿命に達した場
合には別の症状が見られます。それは雑音が大きくなったり、歪が増えたりした場合で、その場合には交換が必要です。また、真空管
内部の電極を支持する機構がゆるんだ結果、マイクロフォニック雑音が出る場合もあります。真空管を指先で軽く弾くと「チン」とい
った音がスピーカーから聞こえることがあります。この音量が小さければ正常ですが、音量が大きい場合は交換が必要です。その他、
真空管の内部が白くなったものは空気が管内に侵入してしまっています(私たちは冗談で「真空が漏れた」と言ったりしますが)。ま
た、点灯しない真空 管も交 換する 必要があります。これらの真空管は高価でも、高級でも、希少でもありませんので、少なくとも
2,3のスペアを準備しておくことをお勧めします。
一度に全ての真空管を交換しなければなりませんか?一度に全ての真空管を交換しなければなりませんか?少なくともこのアンプについてはその必要はありません。確かに交換すべ
き真空管は1本だけであっても、完全に特性の一致した1組の真空管をそっくり交換しなければならないアンプもあります。しかし、
Manleyのアンプは真空管1本だけでも交換ができるように、個々の出力管に独立したバイアス調整機構を設けてあります。ただし、最
高に完全無欠の性能を実現するには特性が極めて似通っている真空管を用意するに越したことはありません。Manleyでは、真空管を交
換する場合に備えて、ご使用中のアンプに使用されている真空管と特性の良く似た真空管をひとまとめにした上で、1本1本の真空管
にラベルを付けて管理しています。したがって、真空管を注文する際には最適な真空管を提供できるように、出力管の上部に手書きさ
れた番号を知らせてください。
真空管の使用時間によってアンプの音が変わりますか?真空管の使用時間によってアンプの音が変わりますか?はい、変わります。ただしそれほど大きな変化ではありません。それに
問題は真空管のみですし、交換すれば済むことです。また大出力のギターアンプのように「音色」を理由に半年で真空管を交換するの
とは状況が異なります。Manleyでは真空管の寿命を延ばし、また、新旧の真空管で極力音が変わらないように、真空管を非常に控えめ
に動作させています。これは真空管が4年から5年使用されることを前提としています。真空管の交換による音の改善の度合いは、ご
使用者の「耳」しだいといえます。覚えておいて頂きたいのは、新品の真空管は交換後、音が「こなれる」前、最初の1週間で最も音
が変化するということです。交換した当初は少しばかり「かたく」、「きっぱりとした」音と感じることでしょう。
真空管の交換はむずかしいですか?真空管の交換はむずかしいですか?はい、むずかしいです。ただし、電球を交換する程度には...ですが。本当はとても簡単で
す。電源を切って2~3分アンプを冷まします。これは指にヤケドをしないためです。真空管はまっすぐ引き抜くのではなく、小刻み
に揺するようにして抜くと良いでしょう。仮にご自身の「技術的素養」に自信がなくても、ご両親よりはマシと思えるなら問題はあり
ません。ご両親の世代の人達はテレビを修理するために真空管をテレビから抜いて、近所のファーマシー(現在のコンビニのような店
)に置いてあったテスターに挿して真空管の良否を調べたものです。さて、真空管を挿すのも同じくらい簡単です。ただし、ソケット
の穴にそって正しく挿入し、足を曲げないように気をつけてください。このときも小刻みに揺するようにして挿すと良いでしょう。こ
れがトランジスタ式のアンプの修理だと随分と趣きが異なります。まず、本体のフタを開け、不良となったトランジスタと燃えてしま
った抵抗を探し、ハンダづけを外し、交換用の部品を探し(あるといいですね、幸運を祈ります)、またハンダ付けし、息を殺して電
源を入れる...または買った店に送り返し、2~3週間音楽のない生活に耐え、修理代を払った挙句にまた故障して怒りを爆発させ
る...このどちらかです。つまり、たった1個のトランジスタの不良のせいでオーディオシステム全体が機能しなくなってしまう。
これが真空管式と違うところです。交換用の真空管が必要になったときは、Manleyにご連絡頂ければ本数に関わらず、適正な価格で、
セットで注文される場合には特性の揃ったものを、販売させていただきます。またStingrayを返送して調整、修理をご希望の場合は、
保証規定により、真空管の代金と、不適切な取り扱いによって発生した不具合の修復に必要な費用以外はManleyが負担します(ただし
購入から6ヶ月以内に限ります)。調整、修理後は宅配便で発送し、通常1週間以内にお手元に届きます。
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